英語人材どんなスキルが必要?海外ビジネスレベルの採用基準・教育方法を解説

2021年の英語能力指数調査(EPI:English Proficiency Index)によると、日本は800点満点中、468点調査対象国112か国のうち、第78位となりました。

気になる近隣国の点数はというと、韓国が529点で第37位、中国が513点で第49位、ベトナムが486点で66位、と日本を上回る国が殆どです。小学校3年生から英語が必修になる等、国内英語教育が大きく変化している中、今後はこの順位を覆し日本のグローバル化に大きな成長が見られる事が期待されています。

しかし現状では、中小企業の海外進出が増加する中で英語能力の高い人材を十分に確保することが困難な状態にあります。目下、海外進出を考える企業では、何を基準に人材を選び、またはどのように戦力となる人材を育てることができるのでしょうか。

北澤Nozi

ビジネスシーンごとに期待される英語力も違うので、一つ一つを具体的に考え、適材をイメージしていきましょう。

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海外ビジネス・海外事業部で必要な英語力

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海外ビジネス・海外事業部に必要な英語力はどのくらい? 

日本ではビジネスで使える英語力を図るための指標と言えば、真っ先にTOEICを思いつく人が殆どでしょう。X-HUB TOKYOでは、以下のような指標を推奨しています。

TOEICスコアの目安数値
  • 700-795点 最低限のビジネス英語
  • 800-895点 実際に議論ができるレベル
  • 900以上点 ネイティブと遜色なくやり取り

日本でのテスト運営を担当するIIBCのウェブサイトには、TOEICは、「オフィスや日常生活における英語によるコミュニケーション能力を幅広く測定します。」とあります。しかし受験者は、就職活動のために受験する大学生や、業務で英語が必要なフルタイム勤務者が一番多いというのが実情です。

TOEICの点数の平均点は600点弱です。これは企業に勤める人々だけでなく、様々な英語レベルの学生も含めた点数です。IIBCの調べによると、調査対象とした企業の約半数が採用や昇進・昇格、海外出張・赴任者選抜でTOEICの点数を要件もしくは参考にしていることが分かりました。そのTOEICの点数は以下のように発表されています。

The English club より引用

 TOEICは990点満点で、従来はリスニング&リーディングテストのみでしたが、2016年よりスピーキング&ライティング、スピーキングのみのテストが別に設けられました。しかしリスニング&リーディングテストの利用者が262万人であるのに対し、スピーキングテストの利用者は4万人というのが現状です。一般的に「TOEIC」というと、リスニングとリーディングの事を指すことを覚えておいた方が良さそうです。

The English club より引用
北澤Nozi

筆者は大手企業で若手ビジネスマンに英語を教えていますが「TOEICはXXX点です」という目安は、会話では殆ど繁栄されないという実感があります。

800点後半を取っていても聞き取りが苦手なので会話が上手く進まない人もいれば、700点前半でも限られた単語を駆使して流暢に話す方もいます。900点以上取っていても、リーディングとライティングのテストの点数だけではネイティブと議論できるかどうかを図れないというのが実情だと感じます。

ただ、語彙力を身に付ける上でTOEICの点数獲得、または英検を取ることを目的にするのは効果的な勉強方法です。では、TOEICの点数以外に、どういった点を見ると良いでしょうか?

英語力を見極める質問はこれ!

日頃からどれくらい英語に親しんでいるか、または親しむ努力をしているか?という事が生きた英語を流暢に話す事の鍵となります。パソコン、携帯、ナビの言語を英語にする、英語でニュースを読む・観る、英語で世間話をできる相手を見つけて練習しているなど、そういった机上を離れた努力をしている人物が即戦力になる人材でしょう。

質問の例
  • 海外旅行をしたことがあるか?
  •  海外に住んだことがあるか?
  • 英語、または外国語を学ぶ事が好きか?
  • 海外の時事について興味があるか?

実践的に英語を使っているか、海外に行った経験があるか、外国人と接する機会があるか、等を掘り下げるインタビューができると、戦力になる人材を見出すヒントになります。

海外ビジネス・海外事業部に必要なのは英語力だけじゃない

「仕事の事は伝えられるけど、コミュニケーションが取れない」と海外で駐在するビジネスマンの言葉をよく耳にします。仕事に関する事は知識も経験もあるので大体の事が理解できるけれど、世間話ができない、そのために仕事でも良い関係が築きにくい、という問題が起こります。そういった問題を解決するには、

  • 幅広い日常会話に対応できる語彙とマナリズム
  • 世界に関する広い知識

 の二つが重要な鍵となるでしょう。資格や学歴、TOEICの点数だけでなく、新しい環境に適応する能力やコミュニケーション能力といった、人格や社交性が問われる事がわかります。

海外ビジネス・海外事業部で英語が必要となるシーン

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リサーチ

難易度★★★

リサーチには現地視察、調査活動、市場調査、インタビューなどが考えられます。市場の大きさを知るためのリサーチは、日本語の検索では最新の必要な情報を収集することが困難です。グローバル統計を用いて効率良く作業を進めるには、それなりに高い英語力が必要になるでしょう。また、その市場のデマンドや傾向を知るためのインタビューやアンケートでは、現地の言語で行うリサーチが必須です。(現地視察・リサーチ時に通訳を依頼するポイントはこちら

マーケティング

難易度★★★★

マーケティングにはキャッチコピーや商品、サービスの説明など、クリエイティブライティングと言われるスキルが必要になります。ネイティブで、しかもその文化によく慣れ親しんだ英語でなければオーディエンスの心を掴むことは難しいため、高い英語力が求められるでしょう。(マーケティングを依頼する際のポイントはこちら

現地向け資料の作成

難易度★

パートナーとなる現地の企業やクライアントにアイデアを共有、製品を紹介するための資料の作成は、グラフや図があるので比較的伝えやすいでしょう。資料を説明しながら見せる場合は特に、意図を伝えることが容易でしょう。(資料作成を依頼する際のポイントはこちら

プレゼンテーション

難易度★★

プレゼンテーションは前もって文章を書くことができるので、原稿を見ながらであればそれなりのプレゼンテーションをすることができます。グラフ、図、写真を使った資料を共有しながら進める場合には、更に難易度は低くなります。ただ、プレゼンテーションの中身だけでなくプレゼンターのパブリックスピーチ能力が問われます。企画書・プレゼン資料作成を依頼する際のポイントはこちら

海外進出に向けた通訳の重要性と依頼すべき通訳者の特徴

ビジネス商談、仕入れ

難易度???

商談では突然対面で話すよりも、事前にメールなどでお互いの立ち位置を理解した上で対面する場合が多いでしょう。そういった場合に難しい交渉をしたり、複雑な契約をしたりする事があれば、会話術と理解力が必要になります。しかし、契約内容については書面にするので、ここで必要なのはコミュニケーション能力と言えます。(商談時に通訳を依頼する際のポイントはこちら)。

会計、法律事務

難易度★★

会計、法律事務に関する用語は日本語でも専門の勉強をした人でなければ理解に苦しむでしょう。英語も同じで、専門用語は日常会話で出てくる用語とは全く違います。また、用語ひとつひとつの意味が深いため、普段英語が話せる人が少し勉強して用語を覚えれば良いというのとも違います。逆に、英語が不得手でも会計または法律の専門家であれば少し英単語を訳すだけで、あとは数字を見て意味を理解することができます。税金の申請についても同様です。(契約書作成時の翻訳依頼のポイントはこちら

海外ビジネス・海外事業部で「英語ができない」問題の乗り越え方

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英語の話せる社員を雇う

海外進出に向けて、元々英語が話せる社員を雇い、会社の経営方針や職務について教育し育てて行くという事が当然考えられます。しかし、英語を話せる面接官が確保できず、履歴書に書かれているTOEICの点数だけで判断し実践的な英語力が図れないという難しさがあります。

また、英語力のみでなく専門的な職業にも向いている人材を確保することが困難な現状があります。中小企業では特に、英語を話せて業務のできる人材が不足しているために英語を話せる社員が通訳の役目をしてしまい、本人の本来の業務が遂行できなくなる、または業務がオーバーロードしてしまうケースがあります。

社員・自身の英語力をあげる

上記の状況を回避するためにも、会社の方向性や仕事のノウハウを理解している既存の社員は海外進出先でも欠かせない存在となるでしょう。もともと英語の能力のために採用されたのではない社員には、英語に苦手意識を持つ人も多いかもしれませんが、英語教育を提供し英語力を上げることは必要不可欠となるでしょう。

仮に、海外進出先で専門的な分野のトレーニングなどに通訳付きで行ったとしても、彼らが海外で生活する上で安全を保障し楽しんで暮らすには英語が絶対に必要だ、という覚悟がモチベーションに繋がるでしょう。

ビジネス英語学習におすすめ

ビジネス英語に関するお役立ち情報連載「Business English Column

社内通訳を雇用する

上記の2つの方法でも、英語の話せる社員が不足している、または業務全体の英語の需要が高い場合には社内通訳を雇用するという方法があります。広い知識があり一般的な英語の能力のある社内通訳が要所でサポートに入ることで、業務を理解するエキスパートが実力を発揮して働くことができます。

この場合のデメリットとしては、上位経営会議や時事面談などのセンシティブな内容の会議で通訳を介す場面に発生します。

通訳者を外注する

社内通訳を介すデメリットを解消する方法として、外注通訳を利用することができます。このメディアを運営する株式会社オシエテも、1時間から利用できるオンライン通訳サービスOCiETeを提供しています。オンラインなので、日本でも海外進出先でもサービスを利用することが可能です。

また、OCiETeの通訳サービスは1時間から利用可能なので、商談やセミナー、インタビューなど様々なシーンで必要な時だけ依頼することができ、人件費を抱える必要がありません。企業に合った通訳者とのマッチングサービス、またはクライアントが直接通訳者の自己紹介ビデオを観て担当者を決めるサービスがあるので信頼のできる通訳人材が約束されています。

北澤Nozi

OCiETe通訳の詳しいサービス概要はサービスページをご覧ください!

英語を社内公用語にする日本企業

海外進出の戦力となる社員を育成すること、採用することは容易ではないことがわかりましたが、社内公用語を英語にする取り組みをする企業もあります。長い目で見ると業務効率のアップ、企業価値のアップに繋がると考えられています。

 もちろんすぐに英語に切り替えると、ミーティングの質が落ちるなどのデメリットが考えられます。そのために、メールや資料など一部業務から徐々に英語へシフトしていくことが推奨されています。これは日本の英語教育にも馴染みやすく、実際の英会話よりは格段に実践しやすくなります。

 また、英語を社内公用語とすると、海外から優秀な人材を確保することができます。言語に捉われなければ求人を国外にも広げることができ、英語の得意な人材に仕事を教えて、海外進出の準備をすることができます。

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社内公用語英語化を実践した日本企業の事例

 楽天

楽天では2010年の年頭スピーチで三木谷社長が「世界一のインターネットサービス企業を目指す」ための社内公用語英語化を宣言しました。約2年の準備期間を経て、2012年に業務での日本語を禁止、英語化の徹底を図りました。2015年には 社員のTOEICスコアの平均が800点を突破し、現在では全社員の2割が外国籍社員であるなど、大きな成果が得られています。

ファーストリテイリング

ユニクロ、ジーユーを展開するファーストリテイリングでは、2012年より社内英語化を導入しています。当時、海外で勤務できる最低水準として、本社社員・店長約3,000人にTOEIC700点以上の取得を義務づける方針を立てました。 社員にはコミュニケーションを図れるだけの英語力を身につけるよう課せられ、勉強時間の確保や学習費用補助など施策が用意されました。その後、新卒採用者の約8割が外国籍という改革を遂げました。

社内英語公用化に向けた「準備段階」日本企業の事例

 アサヒビール

2010年より、長期経営計画の一つとして国際感覚を求める社員像を掲げ、英語力向上のための支援施策をスタートしています。あくまでも自主学習をメインとするものですが、CACECと呼ばれる現状の英語力チェック、また社内公募制の海外派遣事業も始まりました。この「海外武者修行(グローバル・チャレンジャーズ・プログラム)」では、社員が海外の提携企業へ半年間出航し、英語によるコミュニケーションや、現地での事業運営に必要な基礎経営知識を身につけることが期待されています

SHARP

SHARPでは、2016年の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業への買収契約をきっかけに英語力が重要視され、現在では一部部門で英語公用化を実施しています。まずは研究開発部門を対象とし、最終的には社内全部署で英語を社内公用語化する方針です。さらに一部の社員には海外勤務を義務付けるなど、国内の電機メーカーとしては画期的な試みを行っています。

株式会社資生堂

化粧品大手の資生堂では、2018年10月を目処に本社部門約2,700名の公用語を英語にすると発表しました。2015年、同社は日米欧中アジアなど、地域ごとの収益管理や商品開発を進める地域本社制を取りました。日本本社は各地域の業務支援をしています。日常会話は日本語のまま、会議言語や資料や社内文書を英語にすることで、世界拠点への円滑な業務支援をする方針を取っています。具体的には、TOEICテストのスコアを基準とし、社員に基礎英語力トレーニングの外部英語教育の機会を提供しています。

三井不動産株式会社

三井不動産は英語公用語化の段階ではありませんが、全社員に英語教育を推進している企業です。ドメスティックなイメージが強い不動産業界にありながら2011年より海外事業を成長戦略の柱として位置づけ、各種研修やTOEIC取得を推奨しました。総合職全社員に対してTOEIC730点以上の取得を設定したり、海外語学学校に4~8週間派遣をさせる必修検収を導入したりと、具体的な改革を始めました。英語に対するアレルギーがなくなり、すぐに海外業務を始められる社員が格段に増えたと同社は話しています。

参考:グローバル採用ナビ

完全な英語公用語化とまではいかずとも、社員の英語レベルを引き上げる試みは多くの会社で行われています。それぞれの企業の目的、計画に沿って英語の導入の方法に工夫をすることで無理なく社員のモチベーションを上げ、英語力とコミュニケーション力の両方を改善することに成功しているようです。

まとめ

全体を通して、企業がTOEICの点数を重視していることがわかりましたが、海外派遣や英語教育補助などの結果を図るツールとしてTOEICが利用されている事も見えてきました。

また、海外から人材を確保することにより、社内で英語を使うことが必然となることも大きな効果が期待できそうです。しかし、英語はスポーツと一緒で、いくらルールや理論を理解しても、実践して練習しなければ活用できるようにならないものです。

そういった実践を楽しみながら実力をつけるパーソナリティーと、能力を伸ばすための雰囲気と環境を作ることができる会社方針の両方が、英語の言葉の壁を越えて海外進出を成功に導きます。

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OCiETeでは海外ビジネス進出において、現地のアテンド商談時の通訳、会社案内契約書の翻訳など、さまざまなシーンで貴社をサポートいたします。

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北澤Noziセカビズライター
通年20年の海外経験があり、南アフリカと日本を行き来する生活を送っています。市場調査員として南アフリカの企業と関わり、フィールドワークの中で見えてきた「今、南アフリカで起こっていること」を日本の方と共有する記事を書きます。興味のあることは人権、環境、ビジネス、社会問題、サブカルチャーなどのジャーナリズム。趣味は料理とキャンプです。