フランスへの赴任経験インタビュー|海外駐在のリアルな話を聞きました!

これから海外赴任をされる方や駐在中の方に向けたインタビューシリーズ「海外駐在のリアルな声を聞きました」記念すべき第一回は、味の素株式会社の望月さんです!

さのち

望月さんがご駐在されていたのはヨーロッパ・フランスへ5年間。

赴任先でのお仕事内容や、現地社員とのコミュニケーション方法、赴任前のマインドセットなど、様々な観点から海外駐在のリアルをお聞きしました!

インタビュイー

味の素株式会社 望月 新平

大学卒業後、味の素社に入社。大阪そして東京にて、国内大手食品企業数社の業務用製品開発部門へのコンサルティング営業を経験した後、業務用事業部へと異動。海外向けうま味調味料などのプロダクトマネージャーを経験し、食品のグローバル展開のスケールの大きさとダイナミズムを学ぶ。その後、フランスのグループ企業にて業務用全領域の広義マーケティング業務に従事。コロナ影響を大いに受けるも、組織改編、R&D拠点新設、EU委員会等行政対応などを経験。現在は日本から海外法人の基盤構築サポート業務を担う。

海外ビジネスに関わる方必見!

New call-to-action

望月さんについて

さのち

海外駐在時の望月さんのお仕事について教えてください

望月 氏

業務用調味料・食感改良製剤のセールス&マーケティングを担当していました。

さのち

海外駐在の期間はどのくらいですか?

望月 氏

2016年の7月から2021年の6月末までです。5年間滞在していました。

さのち

滞在された国と都市はどちらですか?

望月 氏

本部はパリにありましたが、私がいたのはパリから150キロぐらい離れたネール村という場所です。

そちらに工場があり、基本的にはこちらを拠点としてました。

さのち

フランス以外のヨーロッパ諸国もご担当されていたのでしょうか?

望月 氏

現地法人がフランスにあるので、そこを拠点としながら出張という形でドイツやイタリアなど欧州全域を担当していました。

フランスの拠点はヨーロッパやロシアを含めたMENAのヘッドクォーターとしての立ち位置だったんです。

さのち

御社では海外赴任は多いですか?

望月 氏

そうですね。我々の会社はto B向けの商品の他にも、リテールコンシューマーという一般のお客様が手に取るような商材を扱うこともあり、後者のほうが圧倒的に多いです。

リテールコンシューマーを担当する部署では世界各地、特にASEAN諸国にはかなりの人数が現地に赴任しています。

海外ビジネスに関わる方必見!

New call-to-action

海外赴任が決定するまで

さのち

海外赴任が決まったときの心境を教えてください。

望月 氏

実は入社時からずっと海外に関する事業や仕事がやりたいと思っていたので、ずっと手を挙げていたんです。でもなかなか海外赴任のチャンスに恵まれず、妻には「出る出る詐欺」と言われていました。(笑)

ですが、しばらくチャンスはなさそうだったので、日本で頑張ろうと…考えた翌週ぐらいに、フランスへの出向命令が出ました。若干複雑な心境ではありましたね。(笑)

さのち

それは複雑ですね…。(笑)

ちなみに検索エンジンで「海外駐在」と検索すると、サジェストで「海外駐在 行きたくない」とか「海外駐在 不安」とか出てきます。
望月さんは海外駐在に関してご不安はありませんでしたか?

望月 氏

そうですよね。私の場合は子供の頃にアメリカに住んでいた経験があったので、抵抗はなかったですね。

さのち

なるほど。アメリカに住んでいらっしゃったということは、英語はご習得されているのですか?

望月 氏

はい、英語は話せます。フランスの拠点は英語が通じると聞いていたので、語学ができるという点で心理的に安心感がありましたね。

さのち

なるほど、それは安心感につながりますね。

語学といえば帝国データバンク様が2019年に行った調査で、海外進出に課題と感じることで2番目に多かった答えは「言語の違い」でした。

言葉の壁を乗り切るためのアドバイスや、語学力をキープするために努力してらっしゃることを教えていただけますか?

望月 氏

なるほど、そこは確かに不安に感じる部分ですよね。

英語に関して言うと、私の場合は仕事相手が海外なので普段から英語を使っています。なので、普通に仕事をしてるのが語学力のキープに繋がっていると思います。

あとは意図的に英語の本を読んだり、英語の番組を見ることです。英語を使う機会がしばらくないと、単語を忘れちゃったりするので、無理しない範囲で英語に触れるというところは意識してます。

さのち

ありがとうございます。今はネットフリックスやyoutubeなど、英語コンテンツは多数あるのですぐに実践できそうですね!

海外ビジネスに関わる方必見!

New call-to-action
英語コミュニケーションを学ぶ

現役通訳者がビジネスシーンで使える英語コミュニケーションを解説|【連載】Business English Column

海外赴任先での仕事について

さのち

赴任先のフランスでの仕事内容について教えてください。

望月 氏

フランスでの仕事の内容としては大きくは二つです。

一つは業務用製品(調味料および食感改良製剤)の販売・マーケティング活動のマネージメントです。

もう一つは業務用製品の製品開発の担当です。業務用の製品開発はお客様のリクエストを聞いて、塩分等レシピの調整だったり、品質を保つためのアプリケーションをご提案をしたりしていました。
単純にあるものを売るということであれば単純なフローですが、個別提案となると多くの人が携わります。開発R&Dと打合せをして、実際に工場で作れるか、品質は問題ないかなど、色々な部署の人を動かす開発マーケティングを行っていました。
※研究開発部

さのち

フランスでの仕事で、日本との文化の違いを感じたことはありますか?

望月 氏

ずばり進捗管理ですね。

日本人は本当に勤勉で、納期を守る。遅れそうだったら連絡をくれる。専門分野は専門部署や担当に任せておけばどんどんプロジェクトが進んでいきました。

これが当たり前だと思っていたので、フランスの働き方には驚きました。

きちんとマネジメントをしないと基本的に連絡は返ってこない、スケジュールの遅延は日常茶飯事でした。

また品質管理など、自分の専門外の担当の進捗管理は、勉強しながら進めなければならなかったので本当に大変でした。

進捗管理は根本の考え方が違うというか、一番苦労したところかなと思います。

さのち

進捗管理は海外赴任先で困ることのあるあるですね。そういった文化の違いに対して、お互い歩み寄るためにしたことはありますか?

望月 氏

そうですね、最初から意識してたのが「人対人」ということです。別に日本からきた人は偉いわけでも、現地社員が偉いわけでもないので、ちゃんと時間をかけて対面で話すというのは、赴任当初は特に意識をしていました。

お互いを知るためには仕事の話だけでは面白くないので、時間ができたら仕事以外の話をしてみたり。コミュニケーションはやはり重要ですね。

さのち

なるほど。ちなみに業務用製品とは、現地のお客様のオリジナル調味料を作っていらっしゃったんですか?

望月 氏

はい、カスタムメイドも行っていました。あとは幅広くいろんな人に持っていけるようなものも両方作ってましたね。

そうすると現地ニーズをヒアリングをしたり、調査したりしてセールスプランを作ったりしてましたね。

さのち

フランス拠点から近辺の国に商品を売ったりもしていらっしゃるんですか?

望月 氏

はい、行っています。フランスとドイツに支社があります。基本的にフランス人のチームとドイツ人のチームがいました。販売先は欧州エリア全域です

欧州エリア全域となると自社セールスだけではリソースが足りないので、主要な国は代理店契約をしていました。そちらの代理店とのやりとりも担当をしていたので、代理店の方と1週間一緒にお客さんを回ったりしてましたね。

さのち

なるほど、ご自身の会社以外の方とも交流があったんですね。

望月 氏

そうですね。代理店は特にとても多かったですね。

海外ビジネスに関わる方必見!

New call-to-action

コミュニケーションについて

さのち

ちなみにクライアント側では、日本とフランスで違いはありますか?

望月 氏

そうだな…。うちのチームで言うとフランス人とドイツ人は根底ではわかりあえていない感じがしました。普段は同僚としてうまくやってるんですけど、何か起きた時にちょっと強く言い合ったりしてました。

マネジメントの観点からいくと、ドイツ人は結構上の人を見てるんですよね。逆に上の人が言わないと動かない。逆に目上の人が何かを決めると、それに対して忠実に動いてくれる方が多いので、そういう性格を理解した上で指示を出していました。

フランス人の方も、もちろん上の人を見てるんですけど、とは言っても指示を出しても「やりたくない」みたいな理由でやめちゃったりとか。(笑)

さのち

現地でマネジメントする上で心がけたことはありますか?

望月 氏

そうですね、誰に対しても公平に接するっていうとこは心がけましたね。

例えば給料形態で言うと、日本だとどの会社でも基本的に似てるというか、そこまで差がないと思うんですよね。フランスだと人によって専門性を重視した働き方と契約なんです。なのでチームの中でも給料が結構違うんですよね。チームの中でも業種別で、この人はずっとマーケティングだとか、この人はずっとアライアンスリーダーとか。なので結構待遇が違いますし、それを不公平に感じるという感情は当然どこの国にもあります。

なので給料とかの話をするときも面談時間や接し方は基本的に誰にも同じようにしてました。何を言われてもロジカルに説明できるように準備をしていました。

海外ビジネスに関わる方必見!

New call-to-action

海外赴任で変わった考え方や価値観

さのち

海外で働いてみて視野が広がったとか、考え方が変わったとか、そういった経験はありますか。

望月 氏

色々あります。

1番は、時間を大事に使うということをフランスに行って思い知らされました。
フランスでは5週間は必ずバカンスを取ります。それとは別に有給があるので、年間2-3ヶ月は休みです。でも社員は分散して休みを取れるように社会が仕組み化されているので、それはいいなと思いました。

一方で担当がバカンスだからプロジェクトが進まないといった問題も当然起きます。でも「それって、どうするんだ」って言っても、「いないからしょうがない」って。(笑)

でもバカンスは法律的に認められている権利であり、彼らはバカンスのために生きてる人たちなので、本当に時間を大事に使うんですよね。

3週間休んできた同僚がいて、何してたのって尋ねたら何もしてないって言うんです。ちょっと別荘で3週間子供たちと本読んだりして過ごしてきたって言うんです。日本人だと2,3日あったら、色々予定を詰め込んでしまうと思うんですけど、フランス人同僚の時間の使い方は素敵だと思いました。

さのち

そうですね。マネジメントする側としては2ヶ月バカンスを取得されるのは大変だと思いますが、従業員側としてはすごくやっぱりフレッシュになりそうですね。

よくフランス人はバカンスのために働いてるというのも聞きますね。

望月 氏

そうですね。他の欧州のメンバーもよく休みを取っていました。よく経済が回るなぁとも思いますけどね。(笑)

さのち

フランスや欧州の働き方において、日本でも取り入れられそう、または今実際取り入れている働き方や考え方はありますか?

望月 氏

新しい手法ではないのですが、分担するということですね。

1人にタスクを集中させて属人化してると、その人が休めないということもあるので、帰ってきてからは1人の作業を何人かに分担することは意識しています。

海外ビジネスに関わる方必見!

New call-to-action

海外赴任先でのハプニングやトラブル

さのち

赴任先で困ったことやハプニングはありましたか?

望月 氏

日本からすると緊急事態なんですけど、現地からするとどうしようもできないから諦めろ、みたいなのは結構あります

例えば、欠品というのは我々メーカーとしては悪なんですけど。現地の考え方だと異なります。ちょうど駐在中はブレグジットが起きていて、物流が麻痺していてイギリス向けの出荷が難しい時期がありました。クライアントは困っているんですけど、どうしようもないって。本当にどうしようもないんですよね。

ただ日本側から見てると、何やってんだってどうにかしろみたいな。船とか飛行機とか、何か手段が何かないのか、とか聞いても現地は基本的に開き直ってます。日本からすると気になって仕方ないと思いますが…。(笑)

さのち

なるほど。考え方の違いですね。(笑)

これから海外展開を考えている企業に向けて、こういったケースでの交渉やコミュニケーション面でのアドバイスはありますか?

望月 氏

私が心がけたのは、ブレイクダウンしていくことですね。駐在時は何かハプニングが起きて現地社員に指示をしたときに、基本的に「できない」と返答されるケースが80%くらいでした。でもブレイクダウンして話を展開していくと、最初は100%できないって言ったけど、30%だったらできるとなったり。全部白黒は難しいですが、ここまではできるだろうという、ある程度の目星をつけて交渉していくといいと思います。

もちろん経験は必要ですが、ブレイクダウンしていくと、できることの範囲が広がるので、そこから最適な道を探してみてください。

あとは、ただ単にタスクを依頼するのではなく全体像を見せてあげることも大切です。ロジカルでちゃんと筋が通っていれば、「やるべきだ」と思えば動く人たちなので、説得はしやすいと言う感じもあります。

さのち

急なタスクが発生した時って、あまりロジカルに話せなくて「とりあえずお願い!」みたいなことって結構ありますけど、それはNGですね。(笑)

望月 氏

それはかなりNGですね。(笑)

彼らになぜこのタスクを依頼するのかという、理由を説明するのはとても大切です。

海外ビジネスに関わる方必見!

New call-to-action

海外赴任を控えている方へのアドバイス

海外赴任をするために、磨いておくべきスキルを教えてください。

さのち

海外赴任をするために、磨いておくべきスキルを教えてください。

望月 氏

自信を持っていく、ということですね。自信がなくても、あるふりをしたほうがいいです。特に欧米は自信なくても自信持ってるように見えないと、やられてしまう。(笑)

あとは交渉力ですね。ロジカルにストーリーを立てて話す力は役に立ちます。

さのち

なかなか難しいですね。望月さんが自信を高めるためにしたことはありますか。

望月 氏

そうですね、基本的なところですが嘘はつかない。信頼してもらわないと何も始まらないので、この人よくわからないけど、信頼できる人だなって、思ってもらうのは大切なので、伝え方とか、丁寧にコミュニケーションをとることですね。

さのち

海外赴任してよかったことはありますか?

望月 氏

プライベートだと食事と旅行ですね。ヨーロッパだと、色々な国にいけます。

フランス駐在中のご旅行中の一枚

あとフランスでは食事はなんでも美味しいです。パンは基本的に全部美味しい。ワインもチーズもあるし、食と旅行に関してはもう一回駐在したいくらい最高でした。

さのち

現地でのお仕事は大変だと思いますが、食や旅行に関してはとても羨ましいです…!

逆に何か大変だったことや、気をつけるべきことはありますか?

望月 氏

必ずストレスは溜まると思うので、自分のストレス解消方法は知っていた方がいいですね。私の場合は幸い同僚に日本人がいたので、ストレスが溜まった時に一緒に食事に行って発散できました。

あとは法律的に子どもを1人にさせてはいけないので、そこは少し大変でした。日本のように1人で公園に行かせるといったことはできないので、必ず付き添いが必要です。

ご家族でサッカー観戦

あとはアジア食品店は日本の4,5倍するので、日本食はスーツケースにパンパンに詰めていきましょう。(笑)

これから海外赴任をされる方に何か一言アドバイスをいただけますか?

さのち

これから海外赴任をされる方に何か一言アドバイスをいただけますか?

一言で、楽しんでください!とお伝えしたいです。

望月 氏

一言で、楽しんでください!とお伝えしたいです。

私が駐在していたフランスの村は田舎だったので、フランス語しか通じなかったんです。なので赴任当初は困ることもありました。でも身振り手振りでも何とかするしかないって思いましたし、色々なことが挑戦だって捉えて、楽しもうって思ったら楽になりました。

ご家族で観光

でも実は私も家族がフランスにくるまでは、週末は引きこもったりしてました。(笑)でもちょっとずつマルシェに行ってみたり、楽しんだ方が勝ちだなと思いました。今振り返ってみると、最初の1年くらいは楽しまないと損だったと感じます。

ぜひ海外赴任でしか味わえない経験を楽しんでください。

さのち

何事も楽しんで取り組むという姿勢は大事ですね。
ありがとうございました!

海外ビジネスに関わる方必見!

New call-to-action

海外ビジネス進出なら「OCiETe(オシエテ)」

OCiETeでは海外進出に関するさまざまな課題をサポートしております。また現地のアテンド商談時の通訳、会社案内契約書の翻訳など、通訳・翻訳のお困りごとも承ります。

コーディネーターが業界や商品・サービスごとに精通した担当者を、シーンや用途に合わせご案内いたします。お気軽にお問い合わせください。

シェアもお願いします!

通訳・翻訳・現地アテンドについてなど、ご相談はお気軽にどうぞ!
お問合せはこちら

「現地の市場調査を依頼したい」
「自社の業界に詳しい通訳者・翻訳者はいる?」

など、ご相談やお問合せはお気軽にどうぞ!
(電話問合せはこちら : 03-6868-8786/平日10時~19時)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
さのち セカビズ編集部マーケティングマネージャー
株式会社オシエテのマーケター兼、本メディアの編集者。ワクワクする海外ビジネスの情報やヒントをお届けするために、日々奔走しています。海外で仕事をすることを目標に、最近はラジオで英会話とドイツ語を学び始めました。猫とヴァイツェンビールとオーストリアが好きです。