もくじ
日本企業のグローバル化は今や選択肢ではなく必須となりつつあります。しかし「国際展開」と一口に言っても、そのアプローチは大きく二つに分けられます。一つは「国内インバウンド戦略」—日本国内にいながら外国人顧客を取り込むビジネス。もう一つは「海外アウトバウンド戦略」—自社のビジネスを海外市場へと展開していく方法です。
どちらの道を選ぶべきか。それは企業の規模、事業の性質、リソース、そして目指すゴールによって異なります。本記事では、日本国内で海外ビジネスへの第一歩を踏み出そうとしている経営者や事業開発担当者に向けて、両戦略を比較し、自社に最適な道筋を見つけるためのヒントをご紹介していきます。
国内市場と海外市場それぞれの現状

ターゲットは同じく「外国人の方々」であっても、国内市場と海外市場どちらを狙っていくかで状況は異なります。まずはそれぞれの現状について大まかな違いをご紹介します。
日本国内の外国人市場の現状
コロナ禍からの回復を経て、訪日外国人数は急速に増加しています。2024年には訪日外国人消費額が過去最高を更新し、特に体験型観光やラグジュアリー商品、地方の特産品への関心が高まっています。さらに、在留外国人数も増加傾向にあり、日常消費やB2Bビジネスにおいても外国人顧客は重要なセグメントになりつつあります。
国内インバウンドビジネスのメリット
- 参入障壁の低さ:海外に拠点を設ける必要がなく、初期投資を抑えられる
- リスク管理の容易さ:自国の法規制の範囲内で事業展開できる
- 既存リソースの活用:現在の人材・設備を活かしながら顧客層を拡大できる
- 直接的なフィードバック:顧客との対面接点から迅速に市場反応を把握できる
国内インバウンドビジネスのデメリット
- 市場規模の限界:訪日・在留外国人数に依存するため上限がある
- 季節変動・外部要因への脆弱性:感染症や国際情勢などの影響を受けやすい
- 競争の激化:参入障壁の低さゆえに同業他社との差別化が難しい
国内インバウンドビジネスの成功事例
家電量販店や総合免税店を運営するラオックスホールディングス株式会社は、訪日外国人のニーズを徹底的に分析し、商品構成や多言語対応、決済手段の多様化によって大きな成功を収めました。また国内を中心にホテル・旅館等のリゾート運営を行う星野リゾートは、日本文化の本質を残しながらも外国人向けの説明や体験プログラムを充実させることで、インバウンド需要を取り込んでいます。
海外市場の可能性
一方、海外市場では、特にアジア圏における中間層の拡大が日本企業にとって大きなチャンスとなっています。「日本品質」への信頼は依然として高く、特に食品、美容、ファッション、先端技術分野では競争優位性があります。また、DECアジア(デジタル・E-コマース・クリエイティブ)分野では新興市場が急成長しており、日本企業の技術や知見が求められています。
海外アウトバウンドビジネスのメリット
- 市場規模の拡大:人口減少が進む日本国内市場を超えた成長が可能
- ビジネスリスクの分散:複数国に展開することで特定市場の変動に強くなる
- 新たな視点の獲得:異文化市場での経験が商品開発や経営革新につながる
- ブランド価値の向上:国際展開による企業イメージ・信頼性の向上
海外アウトバウンドビジネスのデメリット
- 高い初期投資とリターンまでの時間:現地法人設立や規制対応などのコスト
- 言語・文化・商習慣の壁:現地スタッフの採用・育成や現地化の難しさ
- 現地競合との差別化:価格競争力や現地ニーズへの対応力の確保
海外アウトバウンドビジネス成功事例
シチズン時計株式会社は、各国の消費者の好みに合わせた製品デザインと現地販売網の開拓により、世界市場での存在感を高めています。また、中小企業の例では、靴下専門メーカータビオ株式会社が日本の品質と技術力を武器に、海外市場でも支持を得ています。
インバウンドとアウトバウンドを組み合わせた「ハイブリッド戦略」という方法も
最近では、インバウンドとアウトバウンドを組み合わせた「ハイブリッド戦略」も注目されています。例えば、訪日外国人向けに商品を販売し、彼らが自国に戻った後もEコマースで購入できるようにする「インバウンド・クロスボーダーEコマース」などがその例です。
一風堂は、来日した外国人に本場のラーメンを体験してもらい、その後海外店舗展開によって本国でも同じ味を提供するという戦略で成功を収めています。
インバウンドとアウトバウンド初期投資とタイムラインの違い

インバウンド戦略は比較的少ない投資で始められますが、短期的なリターンが中心となります。対して、アウトバウンド戦略は初期投資が大きい反面、成功すれば長期的かつ大きなリターンが期待できます。
国内インバウンドビジネスで必要なリソースと体制
- 多言語対応スタッフ(または翻訳ツール)
- 外国人向けマーケティング知識
- インバウンド特化型の決済システム
海外アウトバウンドビジネスで必要なリソースと体制
- 現地法人または提携先
- 国際法務・税務の知識
- 現地市場調査能力
- 越境物流システム
マーケティング戦略の違いは?
インバウンド戦略では、来日前の外国人へのデジタルリーチと、来日後の実店舗体験の最適化が鍵となります。一方、アウトバウンド戦略では、現地の文化的背景を理解した上での商品カスタマイズと、現地のマーケティングチャネルの活用が重要です。
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「自社にとって最適な選択は?」業種別・規模別の適性比較
ここまで国内インバウンドビジネスと海外アウトバウンドビジネスについての違いを解説していきました。その中でも今現在どちらがより自社に合っているのか。業種・規模別に適したビジネス展開方法についてご紹介していきます。
- 業種による適性
業種 | ビジネス戦略 |
---|---|
小売・飲食業 | インバウンド戦略が比較的取り組みやすい |
製造業 | 技術力を活かしたアウトバウンド戦略が有効 |
サービス業 | インバウンドから始め、ノウハウ蓄積後にアウトバウンドへ |
- 企業規模による適性
企業規模 | ビジネス戦略 |
---|---|
スタートアップ・小規模企業 | リソース制約があるためインバウンドから始め、段階的に拡大 |
中堅企業 | 特定市場・特定商品に特化したアウトバウンド戦略 |
大企業 | 複数市場への同時展開や買収によるグローバル展開 |
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まとめ
国内インバウンドと海外アウトバウンド、どちらの戦略が最適かを判断するには、以下の三つの視点が重要です。
自社の現状分析:人材・資金・技術など、現在持っているリソースは何か
強みの活かし方:自社の強みは国内と海外、どちらの市場でより評価されるか
長期的なビジョン:5年後、10年後に目指す企業像はどのようなものか
グローバル化は一朝一夕に成し遂げられるものではありません。しかし、自社の特性を理解し、市場の機会を見極めた上で適切な戦略を選べば、規模や業種を問わず成功の可能性は開かれています。
国内にいながらグローバルな顧客と向き合うのか、あるいは海を越えて新たな市場に挑むのか。その選択が、あなたのビジネスの未来を左右します。まずは自社のリソースと強みを見つめ直し、一歩を踏み出してみましょう。
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