北極をめぐる地政学

北極をめぐる地政学

エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。

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 ウクライナや中東では紛争が続き、台湾をめぐっても軍事的緊張が高まっていますが、近年諸外国の注目が北極に集まっています。

地球温暖化による影響は世界各地で見られますが、北極では気温上昇が地球全体の4倍もの速さで進行し、この35年の間に北極全体の氷河は3分の2が消えたとも言われます。

これは極めて深刻なことですが、北極を覆う海氷の面積が縮小していく中、諸外国の間では北極海航路の開拓、北極海に眠る資源への注目が集まっています。

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北極海航路やエネルギー資源の魅力

日本と欧州を結ぶ海上貿易路を考えた場合、例えば、横浜とオランダのロッテルダムではスエズ運河を通る南回り航路で2万キロにもなりますが、北極海航路(ロシアと米国の国境にあるベーリング海峡から北極海を経て、欧州に至る航路)は南回り航路の6割ほどなので大幅なショートカットとなり、燃料費や温室効果ガス排出量などを削減でき、航行日数も短縮できます。

北極の天候は厳しく、ブリザードなど北極の厳しい気象条件を考えると決して安全な航行ルートとは言えませんが、北極海航路は極めて魅力的な選択肢となります。

また、諸外国の間ではエネルギー資源をめぐる獲得競争が激しくなっていますが、北極海には世界で未発見の石油の13%、天然ガスの30%があると言われ、特に中国が北極海に触手を伸ばそうとしています。

北極への関心を強める中国

北極海の管理については1996年のオタワ宣言に基づき、その沿岸8か国の米国、カナダ、アイスランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアで構成される北極評議会が主体的な役割を担ってきましたが、中国が北極への関心を強めるようになると、北極をめぐる地政学リスクが顕在化するようになりました。

中国は2018年1月、初めて北極白書という中国が北極にどう関与していくのかについての文書を公表し、「氷上のシルクロード構想」を打ち出しました。

中国は北極開拓のルール作りで影響力を高めようとしており、中国はロシアやノルウェー沿岸、アイスランドやデンマーク領グリーンランドなどへ投資を拡大し、独自の砕氷船で北極海横断を成功させたりするなど、北極への積極的な関与を見せています。

まとめ

中国のそういった姿勢について、米国は北極海を新たな南シナ海にしてはならないと中国を強くけん制し、北極をめぐっても米中の間で対立が顕在化しています。

また、ロシアがウクライナへ侵攻したことにより、ロシア以外の北極評議会の加盟7カ国は、北極開発におけるロシアとの協力を停止することを発表しました。

ロシアは北極への関心を強める中国との関係を強化し、両国は4月に北極海の沿岸警備で協力を強化することで合意し、最近では両国の艦船が米国アラスカ州のアリューシャン列島付近の海域で大規模な哨戒活動を行うなど、北極をめぐっても大国間の覇権争いが激しくなっているのです。

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