日本企業の中国進出は再び右肩上がりになるのか 「静かなる撤退」が続く理由

日本企業の中国進出は再び右肩上がりになるのか 「静かなる撤退」が続く理由

エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。

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日本企業の中国ビジネスに、明確な変化が表れています。

帝国データバンクの調査によると、2026年6月時点で中国に進出する日本企業は1万118社となり、2024年の1万3034社から2916社、22.4%減少しました。これは統計のある2010年以降で最も少ない水準です。ピークだった2012年の1万4394社と比較すると、約3割減少しています。

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日本企業の中国進出が再び拡大する可能性は

注目すべきなのは、単に新規進出が減っているだけではない点です。2024年以降、中国で新たに現地法人や工場、駐在事務所などを開設した企業は1221社だったのに対し、拠点の閉鎖などによる「撤退・所在不明」は4137社に達しました。新規参入を大きく上回る規模で企業拠点が減少しており、日本企業の中国ビジネスが「拡大」から「再編」へと移行していることがうかがえます。

もちろん、この数字だけをもって「日本企業が中国から一斉に撤退している」と見るのは適切ではありません。中国は依然として巨大な消費市場であり、製造、販売、物流、研究開発などの拠点として重要な役割を持っています。実際、ジェトロによれば、2024年10月時点で中国にある日系企業の拠点数は3万864拠点で、世界最大でした。また、2025年のジェトロ調査では、中国で事業を展開する日系企業の63.2%が黒字を見込んでいました。

それでも、今後、日本企業の中国進出が過去のような勢いで再び拡大する可能性については、慎重に見る必要があります。

最大の理由の一つが、日中関係をめぐる地政学的な不確実性です。台湾海峡や東シナ海をめぐる安全保障環境に加え、経済安全保障をめぐる日中間の緊張も企業経営に影響を与えています。2026年には中国政府が日本企業・組織を両用品目の輸出管理をめぐるリストに追加する措置も発表しました。こうした規制環境の変化は、企業にとって中国事業の将来を判断する際のリスク要因となります。

静かなる撤退・縮小

さらに、中国国内の景気減速や不動産不況、中国企業との競争激化も無視できません。帝国データバンクは、日中関係の悪化、不動産不況による景気停滞、政府の支援を受けた中国企業との低価格競争などを、日本企業の中国事業を取り巻くリスクとして挙げています。従来、中国は低コストの生産拠点として大きな魅力を持っていましたが、中国企業の技術力や価格競争力が高まるなか、その位置づけも変化しています。

実際、ジェトロの2025年度調査では、今後1~2年の中国事業について「拡大する」と回答した企業は21.3%で、調査開始以来の最低水準となりました。一方、「現状維持」は64.3%で最も多く、「縮小」または「第三国・地域への移転・撤退」は14.4%でした。つまり、日本企業の中国ビジネスは一斉撤退というより、まずは「現状維持」を選びながら、新規投資には慎重になる企業が増えていると見ることができます。

この傾向を踏まえると、今後想定されるのは、中国からの急激な撤退というよりも、拠点の統合、投資の抑制、生産拠点の分散、第三国への機能移転といった「静かなる撤退・縮小」です。実際、帝国データバンクの調査でも、ベトナムなど東南アジアや日本国内への拠点移設・分散が進んでいるとされています。

もっとも、中国市場そのものの重要性が失われたわけではありません。2025年の日中貿易額は前年比6.2%増の3432億5451万ドルとなっており、日本企業による中国市場への関与が消える状況にはありません。また、トヨタ自動車が上海で電気自動車と電池の開発・生産会社を設立するなど、中国市場を成長機会として捉える投資も続いています。

まとめ

したがって、今後の日中経済関係を「撤退か進出か」という単純な二択で捉えるべきではありません。中国市場に残る企業は残り、必要な分野には投資する一方、新規投資や生産能力については慎重に判断し、サプライチェーンを中国以外にも分散させる動きが進むと考えられます。

日本企業の中国進出は、かつてのような右肩上がりの拡大局面から、選別と再編の局面へ移ったと見る方が実態に近いでしょう。日中関係や中国経済をめぐる不確実性が続く限り、短期間で再び大規模な進出ラッシュが起きるとは考えにくく、今後は企業ごとの判断による緩やかな縮小と機能分散が積み重なっていく可能性があります。

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