トランプ政権下でASEANは中国に有利な展開か

トランプ政権下でASEANは中国に有利な展開か

エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。

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トランプ政権が掲げる保護主義や途上国を軽視する路線は、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国と米国の関係に大きな影響を与えています。

これまで米国は、ASEAN地域において経済的なパートナーシップや安全保障面での協力を通じて重要な役割を果たしてきました。しかし、トランプ政権下での「アメリカ・ファースト」の政策は、自由貿易協定からの離脱や関税引き上げといった形で現れ、ASEAN諸国との経済的な結びつきを弱める結果となっています。

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中国の影響力を拡大する絶好の機会に

例えば、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱は、アジア太平洋地域での経済統合を推進しようとするASEAN諸国にとって失望を招きました。このような動きは、米国が地域の経済発展や途上国のニーズに対して十分な関心を示していないとの印象を与え、ASEAN諸国が米国との距離を置く一因となっています。

一方で、この状況は中国にとってASEAN地域での影響力を拡大する絶好の機会となっています。中国は既に「一帯一路」構想を通じてインフラ投資や経済協力を進め、ASEAN諸国との関係を深めてきました。トランプ政権の保護主義によって米国が後退する中、中国は積極的に貿易や投資を増やし、地域経済における存在感を強めています。

例えば、2020年に署名された東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、中国が主導的な役割を果たす多国間貿易協定であり、ASEAN諸国を含む15カ国が参加しています。この協定は関税の削減や貿易の円滑化を進めるもので、中国の経済的な影響力をASEAN地域にさらに根付かせる要因となっています。

また、中国はASEAN諸国への直接投資も増やしており、特にインドネシアやベトナム、マレーシアなどの国々でインフラプロジェクトや製造業への進出が目立っています。

ASEAN諸国への影響は

ASEAN諸国にとって、中国との経済的な結びつきが強まることは、短期的なメリットをもたらす一方で、長期的には懸念材料も生じます。中国からの投資や貿易に依存する度合いが高まれば、政治的な影響力や経済的な支配力が強まる可能性があり、ASEAN諸国の自主性が損なわれる恐れがあるからです。

例えば、南シナ海での領有権争いを抱えるベトナムやフィリピンといった国々は、中国との経済関係が深まる中で、外交的な立場を維持することが難しくなるかもしれません。また、中国経済の変動がASEAN諸国に直接的な影響を及ぼすリスクも高まります。実際に、中国の景気減速や貿易摩擦がASEANの輸出産業に波及した事例は過去にも見られます。

とはいえ、ASEAN諸国が米国と完全に縁を切るわけではありません。米国は依然として安全保障面での重要なパートナーであり、特にフィリピンなど中国の台頭を警戒する国々にとっては、米国の軍事的プレゼンスが地域の安定に寄与すると考えられています。

しかし、トランプ路線が顕著になれば、これまでの米国ASEAN関係が形骸化することは避けられず、ASEAN諸国は現実的な選択肢として中国との関係強化を優先する可能性が高まります。これにより、中国のASEANにおける経済的影響力は一層強まることが予想されます。

まとめ

このように、トランプ政権の保護主義や途上国軽視の姿勢は、ASEAN諸国と米国の間に距離を生み、その隙を中国が埋める形で地域の力学が変化していくでしょう。

ASEAN諸国は経済的な発展を求める中で、中国との結びつきを深めざるを得ない状況に置かれていますが、その結果として中国依存が強まるリスクも見逃せません。今後、米国がどのようにASEANとの関係を再構築するのか、あるいは中国がどれだけ影響力を拡大するのかが、この地域の未来を左右する重要なポイントとなるでしょう。

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