イタリアで病気や怪我をした時には、どう対処したら良いのでしょうか。イタリアの医療水準はどうなのでしょうか。外国で医療行為を受けるには不安がつきものですよね。私が住むイタリアにおいて、医療システムの概要と病院選び(ホームドクター)の手順などご紹介させて頂きます。
健康寿命世界一イタリア
欧州ではスペインに次いで2番目に長寿な国で、出生時の平均寿命は83.4歳です。(男性81.0歳、女性85.6歳)。EU諸国の大部分では、平均寿命は依然として80歳を超えています。(平均81.0歳)。イタリアを含むほぼすべての国で、女性が優位に立っています。 (出典:Health a Glance: Europe 2018)。
イタリアの医療システムの概要
まずは、イタリアの医療システムの概要をご紹介いたします。
医療保険制度の基本情報
イタリアの医療制度は、所得、性別、市民的地位による差別なしに、すべてのイタリア国民が医療を受ける権利を利用できます。すべての国民に、(正当な滞在許可を得ている外国人も含まれます。)入院、救急医療、一般開業医のサービス、自由に選択できる小児科医による質の高い医療を提供しています。
また、 国民保健サービス(National Health Service/NHS=Servizio sanitario nazionale/SSN)によって賄われる広範な医薬品保険と、健康に不可欠なすべての病院および診断サービスも保証されています。ちなみに、基本保険料の負担はありません。
公立病院と私立病院の違い
公立病院は、国民保健サービス(National Health Service)によって国費で運営されています。認定民間施設(私立病院)は、医療の提供において国民保健サービスを支援するセンターという認識です。これらの医療サービスの費用は、国民保健サービスまたは民間消費によって賄われ、企業は営利企業です。
一般医と専門医の役割
一般医(ホームドクター)は、国民健康保険制度における最初の窓口であり、患者のあらゆる健康問題に対処する事になっています。(事前登録制)例えば、患者が耳痛を訴えたとします。まず、一般医(ホームドクター)にて診察をうけます。その時に医者が詳しい検査が必要だと考えた際に耳鼻科などの専門医を受けるように推奨し、診察券を発行、保健省の管轄医療機関にて、予約をし診察する事となります。ですので、一般医が更に専門医への治療を推奨する場合に、保険適応にて受診をする事が出来る事となります。
一般医
一般医の仕事は、全国的な慣例によれば、以下の通りです。
⚫︎予約制および/または自由診療による外来診察(予約制の場合でも、緊急時やお役所的な手続きには常に対応。)外来時間外は電話相談センターへ連絡が可能、必要に応じ総合病院などの救急も利用できる。
⚫︎訪問診療(午前10時までのオンコールまたは診療予約→ホームドクターに各自の症状を伝え、診療が必要かどうか相談ができます。)
⚫︎薬剤の処方、検査、専門医の受診(規則によって入院などの判断)
⚫︎専門医およびかかりつけ医との相談 入院施設の利用
⚫︎患者の健康記録の保管と更新
⚫︎義務教育学校、保育園、幼稚園、高等学校への再入学のために法律で義務付けられている証明書
⚫︎学校での非競技的スポーツ活動の適性証明書
⚫︎疾病証明書
⚫︎インフルエンザおよび抗肺炎球菌ワクチンの予防接種(保健省が推進する予防接種キャンペーンの一環)
⚫︎追加サービス(小手術、点滴など)
⚫︎全国規約でカバーされていないサービスは、患者の自己負担となります。
ホームドクターを選ぶにあたり評判は口コミは重要です。診療内容により異なりますが、イタリアの場合ホームドクター(一般医)の診療は無料です。その先、専門医の診察が必要になる場合は保険適用もしくは、プランベートドクターに受診となり前述の様に診察待ち日数と料金が異なります。
専門医
専門医は例えば、耳鼻科の他、眼科、循環器科、呼吸器科、心療内科、などの各専門領域における一般的な診察を行います。基本的に、国民健康保険の有無を問わず、専門医資格を所持する医師に診察を受ける事ができます。
総合病院内で働く医師も、自分のクリニックを持っている場合があり、同じ医師にかかるのも保険を使うかによって金額が全く違います。
専門医の診察領域
総合病院内には、耳鼻科、循環器科、眼科、産婦人科、胃腸内科 などの一般的な診察の他、プライベートのクリニックでは、下記の様な診療科を設けています。
総合病院内にもある病院もありますが、一般的には、イメージ写真の様なクリニックにて治療を受ける事ができます。
・心理療法科
・整体師
・理学療法士
・栄養学
・美容医療
・マッサージ療法
・足病学科
・各種検査
イタリアでできるだけ早く受診するには?
専門医受診の際は、同じ総合病院で診察を受けるのも保険適用の場合と、プライベート扱いで診てもらう場合とでは待つ日数がかなり違ってきます。
国民健康保険を利用し、診察料の軽減を受ける患者は登録済みのホームドクターが患者に診察書を発行し、それに基づき専門医の予約を入れます。しかし、この待ち時間の長さが問題になっています。
例えば、緊急性の無い診察は1年待ち、2年待ちなども珍しくありません。ですので、ホームドクターにできるだけ短い期間で見てもらえるコード番号を、診察書に記載してもらう必要があります。(ホームドクターと仲良くしておく事も必要かもしれません)それでも推奨診察期間で診てもらうのは、難しい場合が多いです。
以前は、コールセンターで予約を取っていましたが今はオンライン予約もできます。ちなみに私の場合、歯科治療を保険対応の歯科にて診ていただいた事があります。その場合、レントゲンを外部で撮って持ってこなければならなかったり、予約を取るのが難しかったり大変だったり、対応も良くなく、ストレスが多かったので、今はプライベートに切り替えました。それなりに料金はかかりますが、今は満足しています。
よく理解できないのは、総合病院にて何ヶ月も予約が取れない診察を、プランベート予約に切り替えると、すぐに予約が取れたりする事があります。
”地獄の沙汰も金次第”という様な気がしてなりません。
イタリアでの医療費
保険対応の医療機関は診療内容により割安で診療ができます。例えば、私が診ていただいた眼科の検診は保険適用の場合は、25ユーロで、私立病院の場合は90ユーロほどでした。ほとんどの場合、医療費の支払いにはクレジットカードが使えます。(日本よりもクレジットカードが流通しています。)
イタリアのトップ病院
アメリカのニューズウィーク誌が発表した世界最高の病院ランキングで、30カ国2400の病院の中で初めて35位にランクインした、ローマのポリクリニコ・ウニベルシタリオ・アゴスティーノ・ジェメッリ Irccsと、ミラノで最も大きな病院であるニグアルダ・グランデ・オスペダーレ・メトロポリターノをご紹介します。
Policlinico Universitario Agostino Gemelli Irccs
Policlinico Universitario Agostino Gemelli Irccs(アゴスティーノ ジェメッリ大学総合病院)はローマにある実質イタリアの病院でトップクラス、1500床ほど有する大病院。カソリックの総本山、バチカン市国との繋がりも深く、ローマ法王のかかりつけ医となっていて、報道でもお馴染みの病院です。
ポリクリニコ・ウニベルシタリオ・アゴスティーノ・ジェメッリIRCCS(FPG) 財団は、医療の認定における世界的リーダーである国際合同委員会(JCI)により、学術医療センターとしての認定を更新されました。3年ごとに再確認されるJCIの “Gold Seal of Approval”®は、昨年5月に予定通り厳格な再評価を受けました。そして、ポリクリニコ・ジェメッリ誕生60周年に当たる7月10日に正式に届いた評価者たちの「評決」は、熱狂的かつ、好意的なものでした。このニュースは、ジェメッリ財団と聖心カソリック大学の経営トップも大満足で迎えました。
Grande ospedale metropolitano Niguarda di Milano
Grande ospedale metropolitano Niguarda di Milano ニグアルダ・グランデ・オスペダーレ・メトロポリターノ(ニグアルダ総合病院) はミラノで一番大きな総合病院。ロンバルディア州における主要な移植センターのひとつであり、心臓病、時間依存性疾患、大外傷、救急医療に卓越し患者満足度や国際的な評価が高いです。
各都市に様々な病院がありますので、病院選びの際は口コミで聞いてみるのが良いでしょう。手続きで、自信が無い、不安だとお思いの方は、オシエテを通してご連絡下さい。ご希望に合わせて様々なお手伝いをさせて頂きます。
イタリアの病院の海外患者受け入れ態勢
イタリアに定住する外国籍市民およびその扶養家族で正規の滞在許可を持つ方は、国民健康保険 (以下、NHS)により提供される援助を受ける権利があり、 イタリア国民と同等の扱いを受け、同等の権利と義務を負うことになります。この援助を受けるためには、NHSに登録する必要があります。ただし、緊急の場合は、旅行者でも救急医の受診を受ける事が出来、受付は色分けで優先して受診をしてもらいます。
通訳・翻訳サービスの有無
病院側が通訳、翻訳サービスの手配をするというのを聞いたことがありません。私は旅行者が病気や怪我をした場合に、通訳会社や旅行会社を通して診察や入院、退院の医療通訳や翻訳サービスを何度となくさせて頂いております。困った場合は、ぜひオシエテを通してご相談ください。
海外保険の適用範囲
保険に入っていれば、項目により費用がカバーされる事があります。以前、ミラノで急病になり、入院のお手伝いをさせて頂いた方は、通訳費用もカバーされるとおしゃっていました。ちなみにイタリアの医療はアメリカなどに比べ割安に済む様です。
パスポートだけで受診は可能?
原則として、急病の場合のみ救急病棟で受診が出来ます。長期滞在の場合は、地域保健所(ASL)で保険証を発行してもらってください。私立(プライベート)の場合は、おそらく保険証は必要はないのではないかと思います。
外国人がイタリアで健康保険を利用し受診する方法
イタリアで健康保険証を入手するには国民健康保健サービス(SSN)に登録する必要があります。イタリアの保健医療制度は、「国民健康保険サービス(SSN:Servizio Sanitario Nazionale)」と呼ばれています。イタリア国民はSSNへの登録を義務づけられていますが、外国籍の方は、任意になっていますが、外国籍の方であっても、正規にイタリアに滞在する方はSSNに登録することができます。
登録者には保険証(tessera sanitaria)が発行され、地域保健所(ASL: Azienda Sanitaria Locale)と提携した一般医/小児科医(0歳~14歳)の中から自身のホームドクターを選択することができるほか、イタリア国民同様の医療サービスを受けることが可能となります。保険証の有効期限は原則として滞在許可証(permesso di soggiorno)の有効期限によって期間が決められています。延長も可能です。その時にホームドクターを指定します。(空きがあればいつでも変更可)。登録はイタリア入国日から滞在許可証の有効期限まで有効で、扶養家族にも適用されます(外国人拘留者を除く)。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、イタリアにおける医療についてのご紹介をさせて頂きました。
慣れない地での生活で、いざという時の備えがあると急な怪我や体調不良にも備えられると思います。滞在許可に伴い、保険証も発行してもらえますので不安なときはまずホームドクターに相談し早めに対処されてください。
イタリアはヨーロッパで唯一、0歳から14歳までのすべての子どもたちに、家庭の負担なしで小児科医を選べることを保証している国です。