もくじ
アメリカの市場規模は魅力的!と新規進出を検討しているものの、どの州にすべきか悩む…。そんなビジネスパーソンのために、日本企業の進出実績が高い州の特徴をまとめました。
「新規にアメリカ進出を検討したい」「アメリカに拠点を作る前に州ごとの特徴をざっと把握したい」という方は是非ご一読ください。
日本企業のアメリカ進出状況について
現在、アメリカに進出している企業数は6700社前後、業種別で見ると製造業がトップです。
日本企業はアメリカ50州すべてに進出済みで、中でもカリフォルニア州には1500社以上の日本・日系企業の拠点があります。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p161205.pdf|帝国データバンク 米国進出企業実態調査
アメリカに海外進出するメリット・デメリット
メリット
- 大規模市場での成長(引き続き成長が期待されるアメリカ市場、多様な機会が存在)
- 最先端技術によるイノベーション:(先進的な技術と専門知識にアクセスしやすくなる)
- ブランド力の強化(アメリカにおける成長は国際的な信頼性を高め、グローバルブランドへ)
- 新たなパートナーシップ構築(新規の取引先や提携相手との接触する機会が増加)
デメリット
- 競争の厳しさ(アメリカ市場は競争が激しく、市場浸透が難しい場合も)
- 規制・法的な課題(法律や規制が複雑で遵守のために高いコストを伴うことも)
- 事業コストの高騰(日本に比べ事業運営費用がかさむ可能性が高い)
- 文化・言語の壁(文化的な違いや言語の違いがコミュニケーションに影響する)
アメリカの地域別 ビジネス環境
それでは、地域別に州の特徴やビジネス環境をチェックしていきましょう。
今回取り上げる地域は日本企業・日系企業が多く進出しているエリアです。日本の文化習慣にある程度慣れている現地の方も多く、新規にアメリカ進出を検討している企業の方も進出しやすいのではないでしょうか。
環境の異なる海外へ進出するのは苦労が多いもの。できるだけトラブルが少なく、依頼・交渉・指示内容がスムーズに伝わる場所を選ぶことはとても重要なポイントです。
なお、近年はコロナウイルスの影響やパイロットの減少から、航空業界のサービスの質が低下している、という苦情が増加しています。受付でチケットの不備を指摘されて飛行機に乗れなかった、機内での暴力行為に巻き込まれた、などのトラブルもよく報道されています。飛行機での移動がスムーズにいくかどうかも拠点を選ぶ際の重要なポイントです。
カリフォルニア州
元々、リベラルな雰囲気のカリフォルニア州は、人種差別なども比較的少なく、治安面で安定していること、他州と比較して日系社会の規模が大きいことなどから日本企業・日系企業が進出しやすいエリアでした。
2017年の時点の進出企業数は516社ほど。ただ、最近はコストや法整備の観点から他州へ移転する企業も目立ちます。
https://www.hoover.org/research/california-businesses-leave-state-thousands|California Businesses Leave The State By The Thousands
サンフランシスコ
カリフォルニア州内、サンフランシスコの「ジャパンタウン」は日本人街として知られ、日系スーパーマーケット、本屋、日本食レストランなどが揃っています。カリフォルニアの特徴として、日系コミュニティの規模が大きく「日本の文化的コンテンツ」で新規市場開拓ができる可能性が挙げられます。
また、シリコンバレーのあるエリアとしても有名ですが、地価や人件費が高くどの程度のリターンが得られるのかが気になるところ。実際、リモートワークのポジションを増やすことで、オフィスの規模を縮小しコストダウンを実現している企業は増加しています。
ロサンゼルス
サンフランシスコと同じカリフォルニア州内にあるロサンゼルス。
ロサンゼルスの「リトルトーキョー」は日系コミュニティがあるエリアとして知られ、こちらでも飲食店、本屋など日本の製品やコンテンツが簡単に手に入ります。さらにハリウッドがある場所としても有名で、映画やデジタルメディア業界は圧倒的な存在感を放っています。
デジタルコンテンツの制作にはITの知識が必要ですが、サンフランシスコに比べてテック系人材の給与水準が低いのがポイント。また、アパレル産業も盛んで、カジュアルファッションの製造・卸売り業者も多く存在します。港があり、日本・韓国・台湾への海上輸送手続きが楽にできるという利点もあります。
ニューヨーク州
ニューヨーク州の主要産業には、金融、医療やバイオテクノロジー、メディア、ファッション、エンターテイメントなどが挙げられます。日本企業の進出数は2015年の調査では551社、東海岸エリアではダントツです。
今回は、ニューヨーク州のニューヨーク・シティ(以下ニューヨーク)とバッファローに注目しました。
ニューヨーク・シティ
ニューヨークでは、ファッション、エンターテイメント、メディアやゲーム産業が盛んで、見本市や展示会に参加する企業やプロフェッショナルが各地から集まります。また、金融業の存在感も大きいエリアです。
近年、ファッション・エンターテイメント業界では、マイノリティ・エンターテイナーの活躍が目立ち、市内の人種別人口比も、およそ白人30%、ヒスパニック系30%、アフリカン・アメリカン25%、アジア系15%とマイノリティの占める割合が大きくなっています。
全体的に様々なビジネスが活発に動いている場所ですが、マンハッタンなど医療費が特に高額なエリアもあり、経費やコストに関しては慎重に検討したいところです。https://www.census.gov/quickfacts/fact/table/newyorkcitynewyork/HSG010221
バッファロー
ニューヨークに次いで二番目に規模の大きいバッファロー。元々は製造業が盛んな地域でしたが、現在は医療、教育、サービス業が主流です。
人種別の人口比では白人40%、アフリカン・アメリカン35%、アジア系7%、ヒスパニック系・その他20%。特にアジア系住民の給与レベルが高い場所です。
https://datausa.io/profile/geo/buffalo-ny/
イリノイ州
イリノイ州の主要産業は、製造、農業、食品加工、輸送、医療・バイオテクノロジー、サービス業などです。州内に国際空港が5カ所もあり、また7つの一級鉄道ライン(一番規模の大きい鉄道)が行き交う、輸送業におけるハブの役割を持っています。日
本企業の進出数は583社と多め。中西部の魅力はやはり生活費、物価が比較的リーズナブルなところ。
ただし、その分エリアによっては治安面での不安もあります。近年、イリノイ州でもネットビジネスは注目されている業界の一つではありますが、通販業者の中には詐欺的なサイトの運用や低評価なサイトもちらほらと目立ちます。
現地の業者やサービスを利用したり、コラボレーションを検討する場合は、サイトの利用規約やサービス規約を含め、契約書の内容をしっかりとチェックしたいところです。
https://datausa.io/profile/geo/illinois/#economy
https://www2.illinois.gov/dceo/whyillinois/KeyIndustries/Pages/default.aspx
シカゴ
シカゴは製造業・食品加工業が盛んで、シカゴに進出している日本企業の多くは、金属加工関連や貿易を主な業務としています。
個人的には、質の良いクラッカーやヘルシーなスナック類をリーズナブルな価格で販売している企業が目立つ、という印象です。
航空輸送、鉄道輸送、トラック輸送業が盛んで、アメリカ各地からある一定の規模の商品を買い付けるビジネスにとっては、重要な拠点と言えます。
スプリングフィールド
スプリングフィールドは医療関連およびエンターテイメント業が盛んで、製薬およびバイオテクノロジーを専門とする中小企業が集中しています。
また、エイブラハム・リンカーンゆかりの土地として観光業も盛んです。映画、劇場、メディア、旅行などの分野で働く方にとっては馴染みのある場所かもしれません。https://business.gscc.org/list/ql/health-care-11
https://www.visitspringfieldillinois.com/Default
ハワイ州
ハワイ州は日系移民の多い場所として知られ、毎年、日本人観光客も多く訪れます。もともと金融、不動産、観光業などが主要産業で、ハワイ州に進出する日本企業数は201社ほど。
他の州とは人種構成が大きく異なり、住民の約40%がアジア系住民です。アメリカの中では物価が高いことで知られているので、ビジネスでの進出を検討するなら「コスト管理」は課題の一つと言えます。
https://www.gohawaii.com/
https://www.census.gov/quickfacts/HI
ホノルル
オアフ島にあるホノルルは州都として、さまざまなビジネスが集中しています。
日系のビジネスオーナーも多く、日本語で銀行口座の開設ができる現地の銀行があったり、日本語が通じる施設(ホテル・レストラン・病院など)もあります。
ただアメリカ本土に比べて、通信・インターネットなどのインフラが不安定になりがち、という声も。
またアメリカの医療費は高いことで知られていますが、病院によっては費用に関する問い合わせをしても返答がない、送られてきた内容に不備がある、など一筋縄ではいかない印象もあります。
実際にホノルル進出を検討するなら、日本人が多く、日本語が通じるワイキキ周辺にするのか、それ以外のエリアにするのか、またコスト、インフラの安定性、治安なども検討し、綿密なプランを立てておくと安心です。
https://www.moversandshakas.org/
ミシガン州
ミシガン州は日本企業の新規進出に対し積極的な州の一つで、ミシガン州の主要産業には、製造、医療関連、卸売、IT、エンジニアリングなどがあります。
アメリカは今、製造業への回帰を目標としていて、製造業を得意とする日本企業の進出には追い風と言えます。
製造業の中では、特に自動車製造が盛んで日本企業の進出も目立ちます。ちなみに日本企業の進出数は491社ほど。今回はミシガン州のデトロイトとグランドラピッズに注目しました。
https://www.michiganbusiness.org/industries/
デトロイト
自動車産業で発展したデトロイトは、ゼネラル・モーターズ、フォード、クライスラーといった大手自動車メーカーの歴史と切り離せません。
自動車の大量生産で多くの雇用を生み出した時期を経て、自動車市場が飽和状態になると、日本車のように低価格なメーカーの車が売れるようになりました。アメリカのメーカーでリストラが進み、市内のあちらこちらに廃墟が目立つようになると、アメリカの危険な都市ランキングで必ず名前が出てくるようになりました。
ただ、EV(電気自動車)開発が話題の昨今はまた注目を浴びていて、EV関連企業による投資も徐々に進んでいます。
グランドラピッズ
グランドラピッズはデトロイトから車で2-3時間ほどの場所にあり、ビールや家具の製造で知られています。40以上ものビール醸造所があり、観光地としての印象が強くあります。
酒造関連、または観光業者として進出を検討するなら面白い場所かもしれません。
また、デトロイト市内に出張する機会があれば、グランドラピッズまで出向けばいろいろなビールを楽しめます。
まとめ
いかがでしたか。それぞれの州の傾向、得意な業種を把握すれば、自ずと自社の方向性に合うエリアが見つかります。
また、日本企業の招致に熱心な州は、日本語サイトも設置しているので情報収集が比較的楽です。新規進出には費用も時間もかかるものですが、できるだけスムーズに物事が進む地域を選びたいですね。
新規に進出するなら「なぜサンフランシスコなのか」をよく検討する必要がありそうです。