もくじ
海外でビジネスを展開したいと考えた時の一番初めのステップである情報収集。これがしっかりとできていなければ現実的な計画を立てることができず、商品やサービスの販売にかけた資金と労力が無駄になってしまいます。それだけではなく大きな損失をする、または法律違反を犯してしまう可能性すらあります。この記事では、情報収集のポイントと方法について調べていきます。
ネットリサーチで海外ビジネス情報を収集するには?
情報収集の方法は大きく分けて、ネットリサーチ、現地視察、市場調査会社への相談、の3つの方法があります。今回はネットリサーチの情報収集のポイントと、利用できるメディア、機関についてご紹介致します。
海外進出への準備を加速するためには、海外リサーチサービスを利用するのもおすすめです。OCiETe(オシエテ)ではビジネス展開に向けてリサーチや、海外企業へのアプローチなど幅広くサポートいたします。
海外ビジネスに向けたネットリサーチ5ステップ
① 市場規模を知るための基本情報
「GDP成長率」、「年齢層」、「性別分布」、「所得分布」、「エンゲル係数」などから対象を絞ることで市場規模を理解し、市場の全体像をつかむことができます。この段階で法律や規制に関する調査をしっかりと行い、自社の商品やサービスが対象国で展開できることを確認します。
② コストとプロセスを計画する
商品・サービスを展開することが物流、人材、運営の面から可能であることを検証します。利益を推測するためには、会社の経費となる賃貸、人件費、輸送費、税金、広告料、専門家に支払う報酬などを現地の価格で調査します。
③ 対象となる層を絞る
自社の商品の鍵となる興味や嗜好がわかる情報で、コアなターゲットを選定するために必要です。例えばオンライン物販サービスであれば、携帯電話普及率、インターネット利用者率、オンライン物販の一人当たりの消費額平均、一つあたりの商品の値段の平均、人気の商品など、色々な角度からの情報をできるだけ集めることが大切です。
④ 競合相手となる商品・サービスを調査する
競合相手の商品が「なぜ」「どのくらい」「誰に」「どのように」売れているのかを調べることで、対象、集客方法、人気の理由などを掴むことができ、自社の商品がユーザーに使われている所を具体的にイメージしていくことができます。
⑤ パートナーとなるビジネスを見つける
現地でビジネスを展開するにあたり、現地の勝手がわかるパートナーを作ることは成功につながります。経営を共にするパートナーでなくても、相互の利益となるような関係を持ち集客に繋がることができるでしょう。
この段階では、ビジョンボードを作ったり、ブレインストームをしたりして、できるだけ形に捉われない大きな構想を作り、日本での利用法から離れた考え方をすることが大切です。しかし、最も大切なのは情報の信頼性と鮮度になります。では、どのような機関の情報が本当の情報を掴むことができるのかを見て行きましょう。
信頼性と鮮度の高い情報を収集できる。海外ビジネスお勧めメディア
情報は常に最新のものでなくては意味がありません。比較、成長を見るために過去のデータを入手することは有力ですが、現在のロシアのウクライナ侵略のために燃料費だけでなくひまわり油や小麦粉の値段が高沸したように、世界のどこかで起こっている事件が思いもよらない形であなたのビジネスに影響するかもしれないからです。また、インターネットの普及によって誰でも自由に意見を公言できるため、情報の精査が大変重要です。インターネットのブログから情報を得る場合は、そのメディアとライターの経験を理解して、その情報をどの程度参考にできるのかを判断することが必要です。ここでは、信頼性の高いメディアを紹介致します。
世界に通じる情報バンクから新鮮な統計を入手
ここでご紹介するのは全て世界の統計を見ることができるサイトなので英語のサイトになりますが、日本語で書かれたデータよりも項目、年代、国の数がより充実している点が利点です。
The World Bank (世界銀行)
世界銀行は、「貧困削減と持続的成長の実現に向けて、途上国政府に対し融資、技術協力、政策助言を提供する」ことを目的とした国際開発金融機関です。世界銀行は約8000の開発指標と34,000以上の報告書を無料提供しています。データの例を挙げるとリストが長くなってしまうのですが、簡潔にまとめると、世界の貧困の状態を把握するために世界各国の農業、医療、教育の発展、環境汚染と気候変動、経済成長、エネルギーと鉱業などについての統計を発表しています。
The World Bank インジケーター
世界の問題についてより大きな視野で捉えられるので、ビジネスに関連のない分野の内容でも興味深いデータがたくさん見つかるでしょう。総合データと各国のデータがあるので、自社の商品やサービスのための情報収集に活用できます。
OECD iLibrary
OECD(経済協力開発機構)は、ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関です。OECDの報告書やデータベースを閲覧することができます。情報を共有することで経済、雇用、教育を促進し「あらゆる人々の繁栄、平等、機会、幸福を促す政策を形作ること」を目的としています。日本は1964年にOECDに加盟し、外務省が窓口となっています。データが加盟国のみのものである場合もありますが、その他265か国のデータがCSV、XML、EXCELのフォーマットで個別に入手できる場合もあり、便利です。
Worldometer
開発者、研究者、ボランティアから成る非営利組織で、一秒刻みでカウントするリアルタイムの統計を見ることができます。これが「世界の多くの人の目に触れることで人の意識を変革すること」を目的としています。カテゴリーは、人口(誕生者と死亡者)、政治経済(教育費用、公衆衛生費用、軍事費用)、社会とメディア(携帯電話販売数、ブログ投稿数、Tweet数、Google検索数など)、環境(森林破壊、CO2排出、砂漠化など)、食べ物(栄養不足の人の数、肥満の人の数)、水(使用量、死亡者数、普及率)、エネルギー(使用量、再生可能資源の利用量)、健康(伝染病、HIV、中絶、癌、自殺、交通事故などによる死亡者数)、など興味深い切り口のデータがみつかります。各データの出典がカウンターの下にあり、総合データの情報元のサイトに進むと、国別のデータが見つかります。
ジェトロを利用してみよう
ジェトロとは?
日本貿易振興機構(ジェトロ)は、海外ビジネスの成功を目指す企業に向けて海外経済・貿易情報の入手を支援することを目的とした組織です。身近な存在だと感じていない方も多いかもしれませんが、実は海外進出に向けてさまざまなサポートを気軽に受けることができます。
「これってジェトロに相談していいの?」関係者に聞いてみました
日本企業の動向の情報プロフェッショナル、ジェトロの「できること、できないこと」について、関係者に直接話を聞きながら調査をしました。
ジェトロでできること① アドバイザーに相談しながら、情報サービスを利用する
同ウェブサイトでは、政治・経済動向等の概況、基礎的経済指標(GDP、消費者物価指数、失業率、国際収支等)や、貿易・進出を 検討する際にチェックすべき制度(輸出入手続きや外資に関する規制等)が、国・地域ごとに掲載されています。国内外120カ所を超えるジェトロ・ネットワークで鮮度の高いビジネスニュース(政治・経済動向、制度情報、マクロ経済や各種産業等に関する統計、市場動向など)を、国内外から収集しています。
収集された情報はウェブサイトで閲覧できる他、ニーズに合ったビジネス関連情報を70以上のメールマガジンで入手することができます。ジェトロの国内事務所などが配信しているメールマガジンでは、それぞれの事務所が実施しているセミナーや展示会などのイベント情報を入手することができます。(世界の見本市・展示会情報については、j-messeで検索が可能です。)
ジェトロでできること② 輸出入や海外進出の実務の相談
輸出入や海外進出の実務の相談に対して個別に相談ができる無料サービスがあります。相談の申し込みはオンライン、または直接相談することができます。有料、無料問わず、相談内容によって対応可否を判断されるため、輸出事業者やメーカーが直接相談窓口に相談する必要があります。相談の前に、事例が650件以上収録された、貿易・投資Q&Aを確認することが推奨されています。
ジェトロの貿易相談窓口では、インコタームズ(貨物の流れ)の情報、インボイスや必要書類の作成、輸出入にあたる規制の確認などを含めた貿易実務の相談をすることができます。
関税率については、日本在住企業のみ、サイトを無料で利用することができます。(世界各国の関税率、目的別)。具体的な商品がHSコードの何に分類されるかは、税関が行うものであるためジェトロには判断を依頼することはできません。経済連携協定(Economic Partnership Agreement:EPA)については、こちらのページに詳しくまとめられています (EPAの活用法、マニュアル)。ジェトロは、EPA利用にあたって必要な書類を作成できるツールも提供しています(原産地証明ナビ)。
経験値の高い調査員によって収集された海外事情と、貿易実務に精通したアドバイスは海外進出する企業にとって必須なので、海外進出計画を進める中で連携を取って勧めたい機関です。
ジェトロで相談できないことは?
どういった業種、国、プロジェクトだと協力してもらえるのか? また協力者を紹介してもらえるのか? を関係者に直接聞いてみました。
結論から言うと「ケースバイケース」であり、明確な基準や規則などは存在しないということが分かりました。ただ、市場調査を個別に依頼したり、法律や規律に関する調査を依頼するための機関ではないということは明確にわかりました。国勢調査や協会・組合の公的な発表がされていないデータについては、基本的にはジェトロも対応できないようです。しかし、もしかするとあなたの会社・プロジェクトは特例になる可能性もあるので、まずはお近くのジェトロ事務所に直接お問い合わせください!
- 貿易手続き等の代行
- 特定企業の紹介・推薦
- 契約書の内容判断
- 翻訳、通訳
- 経営判断に関わること
- 商事トラブルの仲裁
- 研究や論文作成等を目的とした相談
- 第3者への提供を目的とした相談
外務省、在外日本大使館の海外進出支援
外務省は各関係庁省と協力しながら日本企業の海外進出を支援しています。政治経済情勢、各種規制などの他、治安状況や生活環境を正確に把握するためのアドバイスを依頼することができます。
情報提供とネットワーキングサポートで現地への架け橋に
「日本企業支援及び企業活動を把握するため、また、経済・社会分野における日本と相手国・地域の関係を把握することにより、施策検討等に参考となる情報を得ることを目的」として海外在留邦人数・進出日系企業数の調査が実施されています。 各国の基礎データについては、各国の大使館のHPで確認することができます。
日本大使館の支援は情報の提供のみではありません。ほぼ全ての大使館、総領事館に「日本企業支援窓口」があり、実際に現地のメディア、法律専門家、関連企業などとの交流の場を設けたり、橋渡しをしたりする支援があります。
大使館や総領事館の施設を活用した企業や商品等プロモーションの場では、現地の流通・小売・飲食関係の事業者だけでなく、現地の政府やメディア関係者等を招待してもらえる場合もありますので、事業の展開を考えている国でこういったイベントを設け、実際に現地の人の反応を見ることを計画することもできます。
法律や規制に関するアドバイスを受けられる貴重な機関
現地に精通する日本の弁護士等による無料法律相談、セミナーの開催、現地の法令、法制度等についての情報提供等があります。更に、外国の行政機関から「罰則を科す」等の内容の文書を、外務省を通さず直接本人に送る事は違法だということで、対処方法のアドバイスが書かれています。外国の行政機関から「罰則を科す」等の内容の文書を受領した場合の対応
筆者は、個人的には「外務省」「日本大使館」と聞いて敷居が高い雲の上のような存在というイメージがありました。筆者が南アフリカに住んでいた10年で、大使館が邦人の安全を守り現地との橋渡しをしてくれる存在だという事を学びました。在南アフリカ大使館については「日本語通訳者リスト」を国内、海外企業に紹介していることから、何度もお仕事を紹介してもらいました。安全情報についても随時共有され、緊急事態には大使に直接連絡が取れるホットラインも紹介されていました。
各政府機関のホームページから情報を得る
国勢調査(英語:Census)は、基本情報を正確に取得することから国のかたちを認識すると共に、政府が地方自治体に資金と支援を分配する方法を決定することに役立ちます。自国の人口、家屋数、雇用状況、教育レベル、民族や宗教の分布など、さまざまな分野の統計があるので、外国の企業もそのデータを基に社会のニーズに合った商品やサービスを提供するヒントを得ることができます。
但し、国勢調査は毎年実施されるわけではありません。アメリカやイギリスを始め、ほとんどの国が10年に一回実施しています。日本、オーストラリア、アイルランド、カナダなどの国では5年に一回実施しています。
国勢調査以外にも、政府がまとめた統計のサイトがある可能性があります。「国名・statistics・research」のワードで検索してみましょう。政府のURLは”gov”が含まれていることが多くありますので、それを目印にしましょう。
国勢調査のカテゴリーを見てみると、各国の社会問題や興味が見えてきます。例えばUKでは、2021年の国勢調査で「性的嗜好(Sexual Orientation)」のカテゴリーを追加した世界で初めての国となりました。LGBT擁護のための政府の積極的な姿勢と、個人の自由と権利を主張するオープンな国民の姿が見て取れます。
まとめ
今回の記事では各国の基本情報、またそれに加えてアイデアを得られるような特殊な情報元を紹介いたしました。輸送や雇用など、自社のビジネスのニーズに合ったコストを計算するための情報、法律や規制に関する情報はJETROや日本大使館に相談することで道が開かれるということもわかりました。次回は、情報を肌で感じる現地視察についてご紹介致します。
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