北京での記念行事と高まる反日意識 駐在員・出張者が注意すべき点

北京での第二次世界大戦終結80周年記念行事と高まる反日意識:駐在員・出張者が注意すべき点

エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。

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2025年9月3日、北京市の天安門広場で「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念式典」が開催されます。

この式典は、第二次世界大戦の中国戦線における勝利を記念するもので、軍事パレードや関連イベントが予定されています。習近平国家主席の演説や新たな軍事力の展示も予定されており、中国政府は「戦勝国」としての立場を国内外に強くアピールする狙いがあるとされています。

しかし、この時期は中国国内で反日感情が高まる傾向があり、在留邦人や中国への出張を予定している日本人は特に注意が必要です。本記事では、この記念行事の背景と、駐在員や出張者が気をつけるべきポイントについて解説いたします。

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記念行事の背景と反日感情の高まり

この式典は、日中戦争(中国では「抗日戦争」と呼ばれる)および第二次世界大戦の終結から80年を記念するものです。中国政府は、1937年から1945年にかけての日本との戦争を「抗日戦争」として強く記憶しており、9月3日は「抗日戦争勝利記念日」として祝日となっています。

2015年の70周年記念では、12,000人の人民解放軍による大規模な軍事パレードが行われ、国際社会の注目を集めました。2025年の80周年記念でも同様の盛大なイベントが予定されており、反日感情を高めるための映画やドラマの放映も増えています。例えば、最近では「南京写真館」などの反日をテーマにした作品が公開され、SNS上では日本に対する否定的な反応が見られます。こうした状況は、中国国内の経済的な不満や社会的な緊張をそらすために利用される側面もあると指摘されています。

歴史的に、9月は反日感情が高まりやすい時期です。特に9月18日は1931年の柳条湖事件を記念する日であり、反日デモや抗議活動が起こりやすいとされています。2005年には反日デモが暴動に発展し、日本関連の店舗が破壊される事件もありました。このような背景から、日本大使館や総領事館は在留邦人に対して注意喚起を行っています。

駐在員・出張者が気をつけるべき5つのポイント

  • 歴史的背景に配慮した行動
9月の記念行事期間中は、歴史問題に関連する言動に特に注意が必要です。例えば、靖国神社参拝や日中戦争に関する話題は避け、SNSや公共の場での発言にも慎重さが求められます。無意識の発言が誤解を招き、トラブルに発展する可能性があります。
  • 人混みや抗議活動の回避
反日感情が高まる時期には、デモや抗議活動が発生する可能性があります。特に北京や上海などの大都市では、軍事パレードや関連イベントの周辺で人々が集まり、感情が高ぶることが予想されます。こうした場所には近づかず、ニュースや大使館の情報をこまめに確認して安全な移動ルートを選びましょう。
  • 日本関連の表示を控える
日本企業のロゴや日本の国旗など、日本を象徴するものを公の場で目立たせるのは避けたほうが賢明です。例えば、日本ブランドのバッグや服装は控えめにし、目立たない服装を心がけるとよいでしょう。また、職場や宿泊施設でも、日本人であることを強調しない配慮が役立ちます。
  • 現地の文化とルールを尊重
中国では、歴史認識に対する敏感さが強く、公共の場でのマナーや態度が重要視されます。現地の習慣やルールを尊重し、誤解を招く行動を避けることが大切です。例えば、大声での会話や過度なジェスチャーは、場合によっては不快感を与えることがあります。
  • 緊急時の連絡先を確保
万が一のトラブルに備え、日本大使館や総領事館の連絡先を常に携帯しておきましょう。また、滞在先のホテルや職場のセキュリティ担当者の連絡先も把握しておくと安心です。緊急時には速やかに安全な場所へ移動し、指示を仰ぎましょう。

安全に過ごすための心構え

反日感情が高まる時期とはいえ、すべての中国人が敵対的な態度を取るわけではありません。多くの中国人は日常生活の中で友好的に接してくれますが、特定の時期やイベントでは感情的な反応が起こりやすいことを理解しておく必要があります。冷静な判断と予防的な行動が、安全で快適な滞在につながります。

また、中国政府は反日感情の過度な高揚を抑える配慮も見せています。例えば、最近では「731部隊」を題材にした映画の上映が延期されるなど、日中関係の悪化を避ける動きも見られます。このような動きを注視しつつ、現地の状況を敏感に察知することが重要です。

2025年9月の第二次世界大戦終結80周年記念行事は、中国の国家意識を高揚させる重要なイベントです。しかし、その背景には反日感情の高まりがあり、駐在員や出張者は慎重な行動が求められます。歴史的背景に配慮し、人混みを避け、日本関連の表示を控え、現地のルールを尊重することが大事です。

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