もくじ
ドイツで病院にかかる時、キーとなるのはどの保険に加入しているか、ということです。ドイツの医療制度は日本とは違い、システムを知らずに病院に行って門前払いということも。病院選びの前に、保険制度の違いやかかり方、予約や支払いに関する知識を備えておくことは重要です。メリットやデメリットも把握し、いざという時に備えましょう。
ドイツの医療保険(法的保険・民間保険)
まず初めにドイツの健康保険には、法的保険 Gesetzliche Krankenversicherung と、民間保険 Private Krankenversicherung があります。短期滞在で海外旅行傷害保険に加入している場合は民間保険に分類されます。どちらの保険に加入しているかで、受付から担当医師まで違いが出てきます。病院によっては民間保険加入者しか受け付けないところもあるので、加入前に違いを把握しておきましょう。
ドイツ 各保険のメリットとデメリットとは
法的保険のメリット・デメリット
法的保険のメリットは、月額保険料が民間保険より安い点です。日本の健康保険に比べれば割高な分、保険対象の通院診療は全額カバーされます。入院時は自己負担金が必要ですが、様々なオプションプランも選べます。2023年の統計ではドイツでは国民の9割以上が法的保険に加入しています。デメリットは、法的保険の加入者お断りの医院や医療科も多く、また、待ち時間も長い可能性が高いことです。
民間保険のメリット・デメリット
民間保険のメリットは、高額医療が受けられる点です。医局部長など上級医師に診てもらえたり、予約も優先されるので、受診までの待ち時間は少なくて済みます。病院によっては民間保険加入者のみを診療対象にしているところもあり、選択肢が広がります。デメリットは、高額な月額保険料。保険カバー対象の診療内容には法的保険同様に自己負担額はありません。
ドイツの病院は大きく分けて3種類
ドイツの病院は一般医 (= 内科) Allgemeinarzt (= Facharzt für Innermedizin)、(開業)専門医 Facharzt Praxis、大病院 Krankenhaus の3種類があります。
通常、専門医や大病院を受診するためには、まず一般医に行き、紹介状を書いてもらう必要があります。民間保険の場合は紹介状なしで、直接大病院に予約を取ることも可能です。
一般医には入院設備はなく、入院が必要な場合は一般医を経て大病院へ行くことになります。
開業専門医では全身麻酔の手術でも日帰りでした。
一般医とは
体調が悪い時の最初の相談窓口が一般医です。ホームドクターとして、風邪や軽傷の怪我などの初期検査、処置をしてもらいます。経過により精密検査や専門医の必要性もここで判断、紹介状を書いてくれたり、緊急性が必要とされる場合は、ここから大病院へ搬送されます。
開業医院のもう一つの役割は病欠届(Arbeitsunfähigkeits-bescheining)の発行です。ドイツでは職場の病欠には病欠届が必要です。法的に雇用者は被雇用者に対し、病欠の1日目から病欠届の提出を求める権利があります。職場の規則を確認しておくと良いでしょう。
私の場合、病欠届は3日以上の病欠から必要、と社内規則で猶予を認めていたため、大変助かりました。
専門医とは
一般医の初期診断で、さらに専門的な検査や治療が必要と判断された場合に(開業)専門医にかかります。 泌尿器科や循環器科など、専門医は細分化されており、日本のように一般医が専門医を兼業するということはありません。大病院の専門医にかかるには一般医もしくは専門医の紹介状が必要で、直接大病院の専門医にかかることはできません。直接大病院に行けるのは緊急外来、救急、もしくは、民間保険被保険者の場合のみです。
大病院
大病院は入院設備を備えた専門科の複合施設で、救急搬送もここで受け入れます。搬送された病院で対応できない、さらにハイレベルな治療機器などが必要な場合はここからさらにランクが上の大学病院などに転送されます。
専門が徹底的に細分化されているので、一人の整形外科医が、腰痛も足も首も診る、ということはなく、ジャンル別に振り分けられ、腰痛の医師は毎日腰の患者ばかりを診療します。
大病院の小児病棟には長期入院児童が社会性を失わないよう、病院内に児童館がありました。
ドイツでの病院の選び方
ホームドクターを探すには、職場や近所の人に直接、評判を聞くのが最も確実です。専門医や大病院は、ホームドクターが紹介状を書く際にいくつか病院名を上げてくれるので、その中から選ぶこともできます。セカンドオピニオンとして複数受診も可能ですので、紹介してもらったうちから複数の病院へ行き、その中から検討してもいいでしょう。
施設の設備などは、一般医、専門医、大病院の分業が徹底しているため、自分で調べなくとも、一般医が病状を診て、病状に見合った必要な検査機器や設備の整った専門医や大病院をいくつかリストアップしてくれます。
病院の数だけ治療法がある「ドイツの病院事情」
ドイツでは「病院の数だけ治療法がある」と言われ、病院や医師によって、同じ症状でもその手術法から処置法まで千差万別です。ホームドクターに、自分の希望を伝えると、いくつかの治療プランを提示してくれます。また、その際にどこまで保険適用内か、適用外ならいくらほどかかるのか、も示してくれます。
ドイツでの病院のかかり方
予約の際には、必ず保険の種類を聞かれます。法的保険か民間保険か、は特に重要です。海外旅行傷害保険やクレジットカード付帯保険の場合は民間保険に分類されますので、民間保険Private である旨をはっきりと伝えること。
法的か民間かで予約がすぐ取れるか、後回しにされるかが決まります。また、保険会社名、保険番号はその場で言えるように手元に置いておきましょう。
受付では保険カードやパスポートを見せ、問診票を記入します。受付や看護師など病院スタッフは英語が通じないことも多いため、辞書や辞書アプリなどを持参すると便利です。
医師は英語の話せる場合がほとんどです。また移民を多く受け入れているドイツでは、外国人向けに、解剖図や人体模型を使ってビジュアル的に病状を説明するのに慣れており、根気よくシンプルに説明してくれます。
ドイツの病院で薬を受け取る方法
薬は処方箋を書いてもらい薬局で購入します。 医院に行くほどでもない疾病や怪我であれば、直接薬局へ行き、相談して自分に合う薬を見立ててもらうこともできます。ただし、処方箋がないと全額自費になります。
ドイツの病院での支払い方法
法的保険の場合は保険会社から直接全額病院へ支払われます。保険適用外治療をした場合はその分のみ請求書が自宅に送られ、後日支払いとなります。カード払いも可能です。個人負担費については必ず治療前に金額入り同意書にサインを求められますので、治療後に覚えのない金額を請求される、ということはありません。
民間保険の場合は、後日自宅に送付されてきた請求書を保険会社に提出、これをもとに保険会社が病院へ直接全額支払います。高額医療の場合は、治療前に医師から見積もりが提示されますので、保険対象かどうかを自分で保険会社に確認する必要があります。
ドイツで救急車を使った時の料金は?
自分で呼んだ救急車は後日、保険会社が必要性を認めなければ有料です。タクシーなど他の選択肢も検討して判断しましょう。開業医院が判断してそこから大病院に搬送された場合は無料です。
まとめ
保険会社を選ぶ時から、治療の選択は始まっています。法的保険にも複数の会社があります。規約やオプションなどをよく検討してコスパの良い保険を選びましょう。
ホームドクターは診療の窓口です。その先の納得できる専門治療につなげるため、自分の希望を丁寧に説明し、的確なアドバイスをしてもらいましょう。セカンドオピニオンも含めたオープンな話し合いをドクターとできるのはドイツ医療のすごい点。
万一、カウンセリングの手間を惜しむ病院に当たったら、病院を変えることも検討しましょう。
待合室も法的と民間で分けている病院があります。