エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。
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APEC首脳会合に参加のため、サンフランシスコを訪問した中国の習国家主席は11月15日、バイデン大統領と1年ぶりの米中首脳会談を行いました。
両国は安全保障や経済、貿易や人権など多くの分野で対立と競争を展開していますが、今回の会談では軍事衝突などで双方が合意し、人工知能分野での規制、温暖化対策などで協力可能な分野で協力を推進していくことで一致しました。
台湾情勢について
しかし、台湾情勢について、習国家主席は台湾に侵攻する計画は一切ないとし、米国に対して台湾への武器支援を停止し、中国による平和的統一を支持するよう要求しました。
そして、台湾統一は必ず実現するとの意思を改めて強調し、バイデン大統領は中国による一方的な現状変更に反対し、台湾周辺での軍事行動を自制するよう要求しました。
米中が対立を続けるなか、今回双方が最悪の事態(軍事衝突)を避け、協力する範囲を拡大させようとしたことは大きな進展と言えます。
中国の経済成長率は鈍化し、不動産バブルの崩壊や若年層の失業率悪化など、習政権としてはこれ以上経済状況を悪化させたくないのが本音です。そして、外国企業の脱中国も顕著になるなか、習政権としては米国との経済関係を安定化させる必要があります。
米中貿易摩擦はどうなっていくのか
また、米国としても、今日ウクライナやイスラエルの問題に対処する必要があり、その中で中国との緊張悪化という3つ目の難題を作りたくないという思惑があります。
今日の米国にウクライナとイスラエル、台湾という3正面で同時対処できる余裕はありません。そのため、中国との対立は何とか安定化させておく必要があるのです。対立を悪化させたくないという範囲で、米中双方の思惑は一致しています。
しかし、それは米中経済の安定化、貿易摩擦の縮小に繋がることを意味しません。今回の会談でもそうですが、台湾や先端半導体など双方が譲れない分野での歩み寄りは全くありませんでした。
米国は、先端半導体が中国軍の近代化に使用される恐れを警戒しているので、今後も先端半導体分野では中国への規制を拡大していくことが予想されます。中国もそれに対して対抗していく姿勢を堅持していますので、米中の貿易摩擦は今後も続くことになります。
まとめ
日本企業としては、米中関係に歩み寄りの姿勢に見えたとしても、それを米中関係の改善と判断してはいけません。
今日の米中会談の目的は、関係を改善するというより、日々続く緊張の拡大を如何に管理するかというものです。