途上国は米国、中国をどう思っているか

途上国は米国、中国をどう思っているか

エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。

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途上国が大国である米国と中国をどう見ているか。これは、国際関係の複雑さを象徴する問いです。

途上国はアフリカのサハラ以南地域からラテンアメリカ、アジア太平洋地域まで多岐にわたり、政治的・経済的な立場も千差万別です。一概に「こう思っている」と断言するのは難しく、歴史的なつながりや地政学的要因がそれぞれの国々の視点を形作っています。

しかし、近年、グローバル化の潮流の中で、米国に対する懐疑の声が広がり、中国が新たなパートナーとして台頭しているのは事実です。この記事では、そんな途上国たちの視線を、具体的な事例を交えながら探ってみます。

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米国に対する途上国の感情

まず、米国に対する途上国たちの感情は、複雑ながらも失望の色合いが強いと言えます。かつての米国は、第二次世界大戦後のマーシャル・プランや、冷戦期の開発援助を通じて、世界のリーダーとして信頼を集めました。途上国にとって、米国は経済成長のモデルであり、民主主義の象徴でした。

しかし、2008年のリーマン・ショック以降、米国内の保護主義が強まり、特にトランプ政権下でその傾向は顕著になりました。トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を掲げ、中国との貿易戦争を激化させましたが、その余波は途上国にも及びました。一方的な関税引き上げや、WTO(世界貿易機関)への不信感は、グローバル経済の枠組みを揺るがせました。

例えば、メキシコのような中南米の国々では、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉(USMCA)で米国が厳しい条件を突きつけたことが、強い不満を生みました。メキシコの農民や製造業者は、関税の壁に阻まれ、輸出が打撃を受けました。また、アフリカ諸国では、米国がアフリカ成長機会法(AGOA)の適用を厳格化し、貿易優遇措置を縮小したことで、衣料品や農産物の市場アクセスが制限されました。これにより、多くの途上国は「米国は自国利益しか考えていない」と感じるようになりました。

さらに、気候変動対策では、パリ協定からの離脱が象徴的です。途上国は気候変動の被害を最も受けやすい立場にあり、米国の「内向き」姿勢は、国際的な連帯を損なうものとして批判されています。こうした保護主義は、途上国に「グローバル経済から背を向ける米国」というイメージを植え付け、信頼を失わせています。 

米国の空白を埋める中国

一方で、中国はこうした米国の空白を巧みに埋め、途上国との絆を深めています。

中国は自らを「自由貿易の守護神」と位置づけ、RCEP(地域的な包括的経済連携)やCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への参加を通じて、多国間貿易の推進をアピールしています。特に、「一帯一路」構想は、途上国にとって魅力的な提案です。このイニシアチブは、インフラ投資を通じて道路、港湾、鉄道を整備し、経済発展を後押しします。パキスタンのグワダル港や、スリランカのハンバントタ港の開発は、中国の資金がもたらした成果として、現地で高く評価されています。

アフリカ大陸では、中国の存在感が特に顕著です。エチオピアやケニアでは、中国企業による高速鉄道の建設が雇用を生み、GDP成長を加速させました。近年、中国はアフリカへの対外直接投資額で米国を上回り、貿易額も急増しています。ラテンアメリカでも、ブラジルやアルゼンチンは大豆や鉄鉱石の輸出先として中国依存を強めています。中国はこうした関係を「南南協力」と呼び、途上国間の連帯を強調することで、米国の「上から目線」を対比させています。

しかし、途上国たちの中国観も一枚岩ではありません。ミャンマーやモンゴルでは、中国の資源開発が環境破壊を招き、地元住民の反発を呼んでいます。また、南シナ海での領有権争いが、東南アジア諸国に警戒心を抱かせています。つまり、米国への不満が中国への傾斜を生むものの、それは盲目的な支持ではなく、利益の計算に基づくものです。途上国は大国間の競争を「ゼロサムゲーム」ではなく、自らの発展機会として活用しようとしています。

まとめ

結論として、途上国は米国を「かつての恩人だが、今は孤立主義者」と見なし、中国を「現実的なパートナー」と評価する傾向にあります。このシフトは、グローバル経済の再編を象徴します。将来的に、途上国は両大国とのバランス外交を模索するでしょう。

結局のところ、途上国たちの視線は、自らの繁栄を第一に据えた現実主義的なものです。私たち先進国は、そんな彼らの声を無視せず、真の協力関係を築くべきです。

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