
エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。
※掲載記事につきましては調査時、投稿時に可能な限り正確を期しておりますが、時間の経過とともに内容が現状と異なる場合がございます。
※掲載記載の内容は、弊社の立場や意見を代表するものではありません。
※提供する情報を利用したことによって引き起こされた損害について、弊社は一切の責任を負いません。
国家が関税をかける理由は、経済や政治、産業保護などさまざまな目的が絡み合っています。
関税とは、外国から輸入される商品にかける税金のことで、輸入品の価格を上げたり、国内産業を守ったりするために使われます。
この記事では、関税の基本的な役割を解説し、トランプ政権下で注目された「トランプ関税」を例に、その目的と影響を分かりやすくお伝えします。

関税をかける主な理由

国家が関税をかける目的は大きく分けて3つあります。
まず、国内産業の保護です。関税を課すことで、輸入品の価格を高くし、国内の製品が競争しやすくします。たとえば、海外から安価な鉄鋼が大量に入ってくると、国内の鉄鋼メーカーが打撃を受けます。関税をかければ、輸入品の価格が上がり、国内メーカーが価格競争で不利になりにくくなります。これにより、国内の雇用や産業を守る狙いがあります。次に、国家の歳入確保です。関税は政府にとって重要な収入源の一つです。
特に、発展途上国では税収の基盤が弱い場合、関税が財政を支える役割を果たします。歴史的には、19世紀のアメリカでも関税が主要な歳入源でした。現代では、関税の歳入としての重要性は下がっていますが、いまだに一定の役割を果たしています。さらに、政治的・外交的なツールです。関税は、貿易相手国との交渉や圧力の手段としても使われます。
たとえば、ある国が不公平な貿易を行っているとみなした場合、関税を課して相手国に政策変更を迫ることがあります。また、国内の支持を得るために、関税を「自国の利益を守るための武器」としてアピールすることもあります。
トランプ関税とは?
2018年から2020年にかけて、トランプ米大統領(当時)は中国、カナダ、EUなど多くの国に対
して高関税を課しました。
特に中国に対しては、鉄鋼やアルミニウム、電子機器など幅広い製品に10~25%の関税をかけ、「アメリカ第一主義」を掲げました。
この「トランプ関税」の背景には、以下のような目的がありました。
- 貿易赤字の是正
トランプ政権は、米国の巨額の貿易赤字(特に中国との赤字)を問題視しました。関税を課すことで輸入を減らし、国内生産を増やして貿易バランスを改善しようとしたのです。 - 国内製造業の復活
グローバル化により、米国の製造業は海外の安価な労働力との競争で衰退していました。関税を通じて、国内の鉄鋼業や自動車産業などを保護し、雇用の創出を目指しました。 - 中国への圧力
トランプ関税は、中国の不公平な貿易慣行(知的財産の侵害や強制的な技術移転など)に対する対抗措置でもありました。関税を武器に、貿易協定の再交渉を迫る戦略でした。
トランプ関税の影響
トランプ関税は、さまざまな影響をもたらしました。
良い影響としては、一部の米国企業は関税により競争が緩和され、利益を回復しました。たとえば、鉄鋼業界では国内生産が増え、雇用が一部で拡大しました。また、中国との貿易交渉が進み、2020年には「第1段階の貿易協定」が締結され、一定の成果を上げました。
悪い影響としては、関税は物価の上昇を招きました。輸入品の価格が上がったため、米国の消費者が負担するコストが増えました。たとえば、中国からの家電や衣料品の価格が上昇し、家庭の支出に影響を与えました。また、中国も報復関税を課し、米国の農産物(大豆など)の輸出が減少。農家は大きな打撃を受けました。
関税のメリットとデメリット
関税には、国内産業を守り、雇用を支えるメリットがありますが、デメリットも無視できませ
ん。輸入品の価格上昇は消費者に負担をかけ、報復関税によって輸出産業がダメージを受けるこ
ともあります。また、関税は国際的な貿易戦争を引き起こすリスクがあり、経済全体の効率性を下げる可能性もあります。
トランプ関税の例を見ると、短期的な国内保護の効果はあったものの、長期的な経済への影響は複雑でした。関税は単なる経済政策ではなく、政治的なメッセージや国際関係にも影響を与えるため、慎重な運用が求められます。
国家が関税をかける理由は、産業保護、歳入確保、外交戦略など多岐にわたります。トランプ
関税は、米国経済の強化を目指した一方で、消費者や国際貿易に大きな影響を与えました。
関税は一見シンプルな政策ですが、その効果は経済や社会全体に波及します。これからも、関税をめぐる議論は国家間の経済競争や協力の中で重要なテーマであり続けるでしょう。