イスラエルとイランの軍事衝突:米国の関与と日本のエネルギー安全保障への影響

イスラエルとイランの軍事衝突:米国の関与と日本のエネルギー安全保障への影響

エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。

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6月13日、イスラエルがイランに対して軍事攻撃を開始して以来、両国間の緊張が高まり、軍事的応酬が続いています。この衝突は中東地域全体に波及する可能性があり、特に米国が関与した場合、バーレーンやUAEなどの湾岸諸国にある米軍基地が攻撃対象となる恐れがあります。

さらに、最悪のシナリオとして、イランがホルムズ海峡を封鎖する可能性も指摘されており、これは日本のエネルギー安全保障に深刻な影響を及ぼすと懸念されています。

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イスラエルとイランの衝突の背景

イスラエルとイランの対立は、歴史的・宗教的・政治的な要因に根ざしています。イランの核開発計画や、シリアやレバノンでの代理勢力を通じた影響力拡大に対し、イスラエルは安全保障上の脅威とみなしてきました。特に、今回のイスラエルの攻撃は、イランの核関連施設や軍事拠点を標的としたもので、これが報復の連鎖を引き起こしています。イランはミサイルやドローンを用いた反撃を行い、イスラエルもさらなる空爆で応じるなど、緊張は収まる気配を見せていません。

この衝突の背景には、米国の存在も大きく影響しています。米国はイスラエルの強力な同盟国であり、過去にもイランに対する経済制裁や軍事圧力を主導してきました。しかし、米国が直接的な軍事行動に踏み切れば、事態は一気にエスカレートする可能性があります。イランは、米国が関与した場合、湾岸諸国に駐留する米軍基地を攻撃する可能性を示唆しており、これが地域全体の不安定化を招く恐れがあります。

湾岸諸国の米軍基地へのリスク

バーレーンやUAEには、米国の主要な軍事拠点が存在します。バーレーンには米国海軍の第五艦隊司令部があり、UAEには空軍基地や補給拠点が置かれています。これらの基地は、ペルシャ湾地域における米国の軍事プレゼンスを支える重要な役割を果たしています。しかし、イランとの軍事衝突が激化した場合、これらの基地はイランのミサイルやドローン攻撃の標的となる可能性が高いです。

イランは、精密誘導ミサイルや弾道ミサイルの能力を強化しています。米軍基地が攻撃されれば、湾岸諸国の安全保障環境が悪化し、周辺国の経済やエネルギー供給にも影響が及びます。特に、UAEやサウジアラビアは日本の原油輸入の主要な供給国であり、こうした地域の不安定化は日本のエネルギー市場に直接的な打撃を与える可能性があります。

ホルムズ海峡封鎖の脅威

さらに深刻なのは、イランがホルムズ海峡を封鎖する可能性です。ホルムズ海峡は、ペルシャ湾から世界市場へ原油や天然ガスを運ぶための重要な海上ルートであり、日本を含むアジア諸国にとって生命線とも言えるルートです。

イランは過去にも、米国やその同盟国への対抗措置として、ホルムズ海峡の封鎖をちらつかせてきました。実際に封鎖が実行されれば、原油価格は急騰し、国際経済に大きな混乱が生じます。

日本は原油輸入の約9割を中東に依存しており、特にサウジアラビアやUAEからの輸入が大半を占めています。ホルムズ海峡が封鎖されると、原油供給が滞り、エネルギー価格の高騰や産業活動の停滞が懸念されます。これは、企業活動や家計に直接的な影響を及ぼし、日本の経済全体に深刻な打撃を与えるでしょう。

日本のエネルギー安全保障への影響

日本はエネルギー資源のほぼ全てを輸入に頼っており、中東地域の安定はエネルギー安全保障の要です。ホルムズ海峡の封鎖や湾岸地域の不安定化は、原油や天然ガスの供給不足を引き起こし、エネルギー価格の高騰を招きます。これにより、電力料金やガソリン価格が上昇し、製造業や運輸業などエネルギー依存度の高い産業に大きな影響が出ます。また、消費者物価の上昇は家計を圧迫し、経済成長の足かせとなる可能性があります。

日本政府は、こうしたリスクに備えてエネルギー安全保障の強化を進めています。たとえば、石油備蓄の活用や再生可能エネルギーの導入拡大、LNG(液化天然ガス)の調達先多元化などが挙げられます。しかし、短期的な供給不足に対応するには限界があり、ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、経済への影響は避けられません。

今後の展望と日本の対応

米国がイスラエルとイランの衝突に直接関与するかどうかは、事態の行方を大きく左右します。米国が軍事介入を控え、外交的解決を優先する場合は、緊張緩和の可能性もあります。しかし、イランが米軍基地やホルムズ海峡を攻撃対象とする場合、米国は報復せざるを得ず、全面的な地域紛争に発展するリスクがあります。

日本としては、中東地域の安定化に向けた外交努力を強化する必要があります。米国や湾岸諸国との連携を深めつつ、イランとの対話チャンネルを維持することも重要です。

また、エネルギー安全保障の観点から、短期的な備蓄活用や調達先の多様化に加え、長期的な再生可能エネルギーへの投資を加速させる必要があります。

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