エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。
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イスラエルとレバノンの親イラン勢力ヒズボラとの間で停戦が発効した11月27日、シリア北西部を拠点とする反政府勢力がシリア第２の都市アレッポへ大規模な攻撃を開始しました。そして、反政府勢力は12月1日にアレッポを掌握し、5日のハマ、8日のホムスと制圧を続け、ついには首都ダマスカスの陥落が発表され、同国で長年に渡って実権を握ってきたアサド政権が崩壊しました。
アサド政権崩壊を主導したシャーム解放機構とは
アサド家は父息子で50年以上のわたって独裁的にシリアを支配してきました。アサド氏はロシアに亡命しましたが、その長期独裁政権があっという間に崩壊したことに大きな衝撃が走っています。
今回のアサド政権崩壊を主導した反政府勢力は、「シャーム解放機構（HTS）」と呼ばれる組織で、もともと2011年にシリアで結成されたアルカイダ系勢力「ジャブハットアルヌスラ」を前身組織とします。アルカイダとは、2001年9月11日の米国同時多発テロを実行したテロ組織です。
アルヌスラは2012年1月に初めて自らの存在を公表し、アサド政権の打倒を宣言し、厳格なイスラム法による宗教国家建設を目標とするイスラム原理主義組織で、イラクで活動する「イラク・イスラム国（ISI）」の支援によって設立され、ISIの最高幹部アブ・バクル・アル・バグダディがアルヌスラのトップにアブ・ムハマド・ジャウラニを指名しました。
バグダディ氏は2014年6月に台頭したあのイスラム国の創設者であり、ジャウラニ氏は今回のアサド政権打倒を主導したシャーム解放機構にトップです。
しかし、アサド政権の打倒を掲げるジャウラニ氏は、バグダディ氏と意見が合わなくなって関係を断絶し、2013年4月にアルカイダの指導者アイマン・ザワヒリ氏に忠誠を誓い、アルカイダのシリア支部となったものの、2016年7月にアルカイダとの決別を発表しました。
その後、ジャウラニ氏のアルヌスラは複数の関連組織と合併し、2017年1月にシャーム解放機構が結成され、今月に長年の目標だったアサド政権の打倒を達成したのです。
まとめ
今後、シャーム解放機構のジャウラニ氏がシリアの復興や発展を進めていくことになりそうですが、現時点で欧米諸国はそれを歓迎する方針で、アサド政権の崩壊によってすぐに中東情勢が荒れるようなことはないでしょう。
ジャウラニ氏もアルカイダやイスラム国との関係断絶を長年示し続けてきたので、諸外国との外交関係も重視していくことでしょう。
しかし、シャーム解放機構に異を唱える勢力も存在し、シリア北東部にはイスラム国が依然として活動しており、シリア復興や発展がスムーズにいくかは分かりません。今後はシリア情勢が中東全体にどのような影響を与えるかに注目する必要があります。
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