中国の対日姿勢を読み解く

中国の対日姿勢を読み解く

エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。

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最近、日中関係が急速に冷え込んでいます。日本のメディアでは、中国が日本に対して非常に厳しい、あるいは強硬な態度を取っているように報じられることが多くあります。歴史認識問題、尖閣諸島をめぐる領土問題、そして最近では東京電力福島第一原発の処理水海洋放出に対する中国側の強い批判や対抗措置が取り上げられるたびに、「中国は日本に断固とした姿勢で臨んでいる」という印象が広がっています。

しかし、実際の中国政府の行動を一つ一つ探ると、本当は強硬な手段に徹することを避けている、もしくは日中関係を決定的に悪化させたくないという思惑が透けて見えます。

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「団体旅行の停止」という措置

その最もわかりやすい例が、日本への中国人観光客の渡航に関する対応です。高市首相の台湾有事をめぐる発言をきっかけに、中国政府は「団体旅行の停止」という措置を取りました。しかし、個人旅行については明確な「渡航禁止」ではなく、あくまで「自粛を呼びかける」という非常に曖昧で非強制的な表現に留めています。

一見すると、これは日本への圧力に見えますが、実は極めて現実的な計算が働いています。

もし中国が本気で「日本への渡航全面禁止」や「日本からの輸入全面停止」といった強硬措置を取った場合、そのダメージは日本だけでなく、中国側にも跳ね返ってきます。中国の旅行会社や航空会社は大きな経済的損失を受け、ビジネス渡航まで制限されれば、サプライチェーンの混乱や対日投資の停滞を招きます。

つまり、「禁止」にしてしまうと、中国自身の経済成長目標や雇用維持に深刻なマイナスとなるのです。

中国政府が最も恐れているもの

いまの中国政府が最も恐れているのは、 不動産バブルの崩壊、若年層の高い失業率、そして
構造的な成長鈍化など国内の深刻な経済リスクです。こうした内部課題が山積する中で、アジア最大の貿易相手国であり、重要な投資先である日本との関係を「自爆的に断絶させる」ような強硬策は、国益にまったく合いません。

中国共産党にとっての最大の国益は、何よりも「一党支配を支える経済的・社会的な安定」です。日本に対して強い言葉を発することは、国内のナショナリズムを刺激し、国民の不満を外にそらす便利なツールではあります。

しかし、そのツールを振りかざしすぎて、肝心の経済的なパイプラインまで壊してしまっては本末転倒です。

まとめ

したがって、中国の対日姿勢は、「言葉は厳しく、強い非難を繰り返すが、実際の行動は限定的で、関係が決定的に破綻しないよう配慮する」と表現できるでしょう。

つまり、「管理された緊張状態」を維持しながら、国内統治に利用しつつ、経済的な実害は最小限に抑える、これが現在の中国の本当の狙いです。

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