
エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。
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トランプ政権の2期目が始まり、欧州との貿易摩擦が再び注目されています。
トランプ大統領は初任期中から保護主義的な通商政策を推進し、特に欧州連合(EU)に対して強い不満を示してきました。再登板後、その姿勢はさらに明確化し、関税引き上げや貿易不均衡の是正を求める発言が目立っています。
では、今後この関係はどう展開するのでしょうか。

両者の対立はエスカレート
トランプ氏は選挙戦から「米国第一」を掲げ、対外貿易赤字の削減を最優先課題と位置づけてきました。EUとの貿易赤字は2024年時点で約2356億ドル(約35兆円)と、中国に次ぐ規模です。
彼はEUが米国の自動車や農産物を受け入れず、不公平な貿易慣行を続けていると批判し、特に自動車関税(EUは10%、米国は2.5%)や付加価値税(VAT)を「懲罰的」と非難し、2025年2月にはEU全品目への25%関税を表明しました。
これに対し、EUは報復として260億ユーロ(約4兆2000億円)相当の米国製品に追加関税を課す計画を発表し、即座に鉄鋼・アルミニウム関税が発効し、両者の対立はエスカレートしています。
EUの戦略は

トランプ政権は関税を外交の武器として使い続けるでしょう。25%関税が現実化すれば、EU経済に打撃を与える一方、米国消費者にも物価上昇の形で跳ね返ります。EUは米国からの輸入品(例:ウィスキー、オートバイ)に報復関税を課す可能性が高く、過去の例(2018年の鉄鋼関税への報復)を踏まえれば、迅速かつ断固とした対応が予想されます。
しかし、全面的な貿易戦争に突入するかは、交渉の余地を残すEUの戦略次第です。
歴史的に、トランプ氏は強硬姿勢の後に妥協を引き出す手法を取ってきました。2018年の米EU貿易交渉では、一時的に関税戦争が回避され、農産物やエネルギーの取引拡大で合意した経緯があります。
今回も、EUが米国産液化天然ガス(LNG)や大豆の輸入増加を提案するなど、譲歩を示す可能性があります。特に、ウクライナ紛争でロシア産エネルギーに依存しない選択肢を求める欧州にとって、米国との関係修復は重要でしょう。
また、貿易摩擦は単なる経済問題に留まらないでしょう。トランプ氏がNATOへのコミットメントを条件付きとする発言を繰り返す中、EUは安全保障での自立を模索しています。
貿易対立が深まれば、欧州は米国依存を減らし、中国やASEANとの関係強化にシフトするかもしれません。
まとめ
今後の行方を予測することは難しいですが、トランプ政権と欧州の貿易摩擦は短期的には激化しつつも、双方に痛みを伴うため、部分的な妥協に至る可能性があります。
EUがエネルギーと安全保障で米国を必要とする一方、トランプ氏は国内経済への成果を急ぎます。2025年下半期には、関税の一部緩和と特定分野での協力が模索されると予想されますが、不確実性は高く、状況は流動的です。
世界が注視する中、米欧関係の行方は経済のみならず地政学にも大きな影響を与えるでしょう。