スペイン国歌には歌詞がない スペインが抱える難しい地政学

スペイン国歌には歌詞がない スペインが抱える難しい地政学

エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。

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7月14日、ドイツ・ベルリンでサッカー欧州選手権の決勝が行われ、スペインが3大会ぶり4回目の優勝を果たしました。

スペインは初戦から7連勝での優勝となったが、ドイツ、フランス、イングランドという強豪国を次々に撃破してのタイトル獲得ということで、スペインは名実ともに欧州ナンバーワンになったと言えます。

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他民族国家のスペイン

一方、今大会ではスペイン国歌が7回も流れましたが、スペイン選手やサポータたちの誰もが国歌を歌いませんでした。それはなぜでしょうか。実は、スペインはカタルーニャやバスクなど言葉や文化を異にする地域を抱える多民族国家なのです。

スペイン観光においては、首都マドリードよりもバルセロナの方が有名ですが、バルセロナはもともとカタルーニャと呼ばれる地域で、カタルーニャの人々はカタルーニャ語を話し、独自の文化と歴史を持っています。

2010年以降でも、スペイン中央政府とカタルーニャ自治政府との間で軋轢が生じた際には、カタルーニャの独立を求める政治運動、抗議デモなどがたびたび発生しています。また、スペイン北東部にはバスク地方があるが、バスク地方の人々もバスク語という独自の言語を話し、独自の文化と伝統を持っています。

慎重な対応を求められるスペイン中央政府

バスク地方でもスペインからの独立を求める声が少なくなく、バスクの分離独立を目指す武装勢力「バスク祖国と自由(ETA)」は長年、スペイン中央政府などを標的としたテロ事件を繰り返し起こしてきました。

ETAは2010年に戦闘停止、2017年に武装解除し、今日ではバスク関連のテロの脅威はほぼゼロに近いですが、スペイン中央政府と間で軋轢が深まれば、再び独立をめぐる運動が激しくなる可能性もあるでしょう。

よって、スペイン中央政府からすると、スペイン国歌で歌詞を設ければ、カタルーニャやバスクなどから反感を買い、スペインの国としての一体性にヒビが入る可能性があり、極めて慎重に対応しなければなりません。

まとめ 

今回の欧州選手権でもバスク地方出身の選手が何人かいましたが、地元からはスペイン代表ではなくバスク代表を作るべきだ、バスク人がスペイン代表でプレーするのは受け入れないなど反発の声も聞かれます。

今後こういった問題が肥大化するリスクはそれほど高くはありませんが、これはスペインにとって非常にナイーブな問題です。

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