エクスレバン
これまで渡航した国は40カ国以上 大学時代から国際経済を学び、現地に赴いて調査を行ったり、政治や経済について執筆活動を行っている。趣味はサーフィンと妻とショッピング。コロナ禍が終わりを迎えるなか、今後は中東やアフリカ方面への現地取材を検討中。
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APEC(アジア太平洋経済協力会議)出席のためサンフランシスコを訪問した岸田総理は11月半ば、中国の習国家主席と1年ぶりの日中首脳会談を行いました。
1年ぶりの日中首脳会談
同会談では、日中双方にとって重要な戦略的互恵関係の推進を再確認するとともに、新たな日中関係を推進していくため意思疎通を重ねていくことで一致しました。
また、双方は温暖化対策や医療・介護分野など協力可能な分野で協力を推進していくことで一致しましたが、中国船による尖閣諸島への領海侵犯、台湾周辺での軍事活動などを停止するよう日本側が呼び掛けたことに中国側は反発し、中国の内政問題に干渉するべきではないと日本側をけん制しました。
また、日本側は中国による日本産水産物の輸入停止措置の即時撤廃を改めて求めましたが、双方が解決に向けて努力するのみに留まりました。
日本企業にとってプラスかマイナスか
今回の日中首脳会談は、中国に進出する企業、中国と取引がある企業にとってどのような意味があるのでしょうか。
まず、中国に進出する日本企業が多いなか、日中の指導者たちが定期的に会談し、関係の発展や改善に向けて、また政治的緊張や貿易摩擦を抑えようと努力することには大きな意義があります。国内経済が冷え込み、外資の脱中国を何とか食い止めたい習政権も、日本との必要以上の関係悪化は望んでいません。今日の日中関係には、1つの出来事によって緊張が一気に肥大化する内在的リスク(台湾有事など)があり、それを抑えるためにも日中首脳会談の積み重ねは重要です。
しかし、台湾情勢や中国での日本人拘束など、日本企業が懸念する事項では依然として進展は見られません。中国側も譲れない問題では譲らないという姿勢ですので、今後も日本企業としてはこういったリスクと付き合う中でビジネスを継続することになります。
また、日本産水産物の全面輸入停止についても、中国側が今後撤廃というカードを切る可能性は極めて低いのが現状です。
まとめ
習政権としては、中国国民を“核汚染水”から守るという名目で輸入停止した背景があり、ここで撤廃を宣言すれば国民からの反発が強まることは避けられず、世界に“弱腰の中国”を見せつけることになります。
今回の日中会談は、日本企業にとっては“必要以上の関係悪化を抑える”という意味ではプラスになったでしょうが、“課題は残されたままで今後もリスクが付きまとう”という意味ではマイナスに働いていると言えるでしょう。