海外ビジネス成功事例|日本の大企業の成功術・海外戦略

コロナで止まっていた経済が動き始め、これまでに溜めたアイデアとエネルギーを実行しようとする企業が多くなっているようです。2022年からの円安の影響を受けて、海外進出の追い風ムードを感じます。円安による価格競争の利点、現地通貨収益による利益、現地生産拠点の運営によるコスト低下が期待できる海外進出で、失敗しないポイントとは? 成功事例と失敗事例から学び、このチャンスを掴みましょう。

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海外進出への準備を加速するためには、海外リサーチサービスを利用するのもおすすめです。OCiETe(オシエテ)ではビジネス展開に向けてリサーチや、海外企業へのアプローチなど幅広くサポートいたします。

日本企業の海外進出状況

海外の市場の規模、市場の成長を魅力に感じる日本企業が増えているようです。越境ECも含めて、日本政府からの海外進出サポート、プロジェクト、支援金が様々な公的団体から次々と提供されています。日本の市場縮小、経済の脆弱化という背景は勿論ありますが、コロナで世界の経済がほぼストップしていたような状態から抜け出して、新しいことを始めたいと思う気持ちが湧き出て来ている表れでもあるのではないでしょうか。

2022年からの円安の影響を受けて、海外進出を考え始めた事業も少なくないでしょう。円安による原料費、燃料費増加の影響は商品価格の高騰を促し、日本市場の更なる縮小が見込まれます。それに対し、海外でのビジネスは円安による価格競争の利点、現地通貨収益による利益、現地生産拠点の運営によるコスト低下が期待できます。

2022年のジェトロの海外進出日系企業実態調査では、平均して約7割の企業が同年の売上利益が「黒字になる」と見込んでいます。また、今後事業を縮小すると考える企業は、対象国の中ではロシアを除いてごく少数ということが分かります。

【表】主要国、地域の2022年の営業利益見込み
出展:海外進出日系企業実態調査|ジェトロ (2022年11月)
【表】今後1~2年の事業展開の方向性 (主要国、地域別)
出展:海外進出日系企業実態調査|ジェトロ (2022年11月)
北澤Nozi

今回の記事では、海外展開した企業の成功例、失敗例から「海外進出で失敗しないコツ」を学ぶべく、調査をしました。

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成功の裏にある、各事業の歴史と戦略

海外展開に成功した事業から、何が成功のポイントとなったのかを学んでいきましょう。まずは、「成功した企業」と同じくらい「失敗した企業」として取り上げられる、ユニクロブランドのファーストリテイリング。一度は完全撤退の一歩手前まで差し掛かったにも関わらず、そこから約20年で、ZARAに続いて売上高では世界第二位のグローバル事業に成長しました。次にご紹介するダイソーの例からは、18年で海外に約2200店舗を展開したターゲティングとポジショニング戦略のヒントを得られます。最後に、明治時代から海外進出を始めた老舗である、味の素の事業例をご紹介しています。

自社の製品はどうしたら海外で売れるのか、またはどんな製品を海外に持ち込むか、今までになかったヒントが見つかりそうです。

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【ユニクロ】ブランディングとオリジナリティーの強さ

海外進出の事業例として最も多く取り上げられている企業は、ユニクロのブランドで知られるファーストリテーリングではないでしょうか。1984年の創業時から、立ちはだかる障害に対して様々な戦略を打ち出し、ことごとくその障害を乗り越え、世界第二位のアパレルメーカーへと成長した背景から、海外進出の成功術を学びましょう。

【表】世界の主なアパレル製造小売業の時価総額ランキング
出典:ファーストリテイリング「IR|業界でのポジション」

ユニクロの歴史
1984年 広島市にユニクロ1号店を出店。ロードサイド店として地方に展開。
1998年 東京進出、原宿店をオープン。
2001年 海外に初進出。英国ロンドンなどに店舗を展開。
2003年 海外店舗21店舗中、16店舗を閉鎖。
2006年 ニューヨークに海外初のグローバル旗艦店を出店。
    (以降5年間で世界7都市に8店舗のグローバル旗艦店を展開。)
2012年 東京銀座にグローバル旗艦店をオープン
2019年 売上高、営業利益、店舗数で海外が国内を上回る

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成功のポイント➀  何故失敗したのか?から学ぶ「企業風土浸透の大切さ」

ユニクロの企業風土には「整理整頓という共通言語でコミュニケーションする」という上下感のない社員関係が掲げられています。社長と現場の社員の関係においても、対等に話し合えるような風土を大切にしています。イギリスで成功できなかった理由には、その風土が伝えられず、ユニクロの理念を実現できなかったためだと言われています。

同社の柳井正氏会長は当時「海外の現地法人は現地の人が経営すべき」という考えのもと、イギリスの老舗デパートでの勤務経験者を社長に採用しました。しかし、老舗デパートの保守的な経営体制ではユニクロの自由な企業風土が生かされませんでした。もともとイギリスの階級社会的な文化も反映され、経営者と店員の間での対等な話し合いも実現されませんでした。

失敗の原因は人材の選択・育成ができていないこと、企業理念の浸透ができていないことです。現地のビジネスに精通した現地人はビジネスの成功に必須ではありますが、企業の風土、理念を経営陣と現場の社員に伝える事は成功の鍵と言えます。

成功のポイント② 2006年以降の「グローバル旗艦店」の効果

販売の拠点となる中心店舗であり、ブランドの浸透を図るための「フラッグシップ-ショップ」を重要視し、世界各地で旗艦店の展開をしています。これは、2003年の反省を活かし、企業のビジョンを共有するための戦略と言えます。そして、その戦略の効果は下の表を見ると一目瞭然です。また、同社は過去10年間は国内事業の約3倍を海外事業に投資してきたということです。

【表】2007年から2019年までのユニクロの国内・海外店舗数の推移
出典:Note「10年前のユニクロの海外売上比率は〇〇だった」(2020年4月)

グローバル旗艦店では、「ユニクロの”今”」を伝えることがテーマ。コラボ商品や最新コレクションなどのショーケースとして商品が揃えられています。ロケーションとして東京銀座を選んだのは、東京の一等地にあることでブランドの高級感を植え付けることが狙い。ファストファッションとしてのイメージが強かった開業時に比べ、現在は普遍的なデザインを提供する「高品質、低価格ブランド」としての位置を築き上げています。

成功のポイント③ SAPによるフレキシブルな経営と素早い商品開発

ファーストリテイリングでは、「企画」「計画」「生産」「物流」「販売」までのプロセスを、一貫して自社で行うといったビジネスモデル、SPA (製造小売業) をとっています。一般的なアパレル会社は、このプロセスを分解しそれぞれの子会社や委託会社が行っているケースが多いですが、SPAによってフレキシブルな経営と商品開発をすることができます。

新素材を使ったオリジナル製品、高品質な天然素材を使った製品は、SPAだから実現できるものです。他社が真似することのできない独自商品の開発はユニクロが世界中でシェアを拡大している一つの大きな要因です。

北澤Nozi

今後は中国大陸、香港、台湾に向けて大幅な拡大を試み、年間100店舗を目指して展開して行くとか。今後どのような困難があろうとも舵を切り替えて荒波を凌ぎ、進んで行くことができる企業だと感じます!ちなみに、SPAで成功しているリテーラーとしては無印良品も定評があります。次は、SPAにフォーカスして見てみましょう。

【ダイソー】SPAによる低コストとマーケティング戦略で競合社を破る

ダイソーは、1972年の創業、2023年2月現在、国内外で6338店舗を展開しています。そのうち海外店舗があるのは26の国と地域で、合計2,296店舗を出店しています。アメリカでは、2005年にシアトルに米国1号店を開店しました。その後、シアトルに6店舗、サンフランシスコに10店舗、そしてロサンゼルスに29店舗と、西海岸の主要都市中心に店舗数を拡大し、2021年には全米で82店舗を展開しました。ここでは、ダイソーのアメリカ展開を例に成功のヒントを学んでいきましょう。

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成功のポイント➀競合「$1ショップ」と差をつけるブランドイメージをSPAにより実現

$1ショップのあるアメリカでは「100均」のコンセプトは新しいものではなく、既に全米に広がっていました。ダイソーの100円商品はアメリカでは実際1ドル50セントほどで販売しなければならず、価格の安さでは競合相手との競争に負けていました。しかし、$1ショップでは店内に清潔さはなく、商品の品質の面では確実にダイソーが優っている、ということを全面的にアピールしました。店内の大きなバナーも「Quality & Value $1.50」と大きく掲げ、この50セントで品質の高いものが購入できると主張しています。この高品質低価格を実現させているのが、同社で商品開発から製造を行うSPA体制なのです。

さらに、ダイソーには独自のデザインチームがあり、デザインの価値を「人を楽しませること」に置いています。ただの生活用品も動物の形をしていたり、家事が楽しくなるような色や形、デザインにこだわっています。これこそがアメリカのこれまでの市場にない価値を生み出し、消費者の心を掴むものだと同社は確信しています。これもまた、市場の反応を即座に反映できるSPAの強さが生きています。

成功のポイント②ターゲティング&ポジショニング

ダイソーは、ロサンゼルスで29店舗を展開するという成功を記録していますが、これにはターゲットとポジションの選択に関する戦略がありました。ロサンゼルスのスタートとしてトーランス市を第1号店の出店地域として選定した理由は、同市には多くの日系企業が集まり、アジア人系人口が多いためでした。現地住民が既にダイソーについて認知していることから、ここを拠点にロサンゼルスでのブランディングを拡散させることを考えたのです。この人種別ターゲティングに基づいた出店で確かな手ごたえを得たダイソーは、ロサンゼルス内のヒスパニック系が集まる地域、白人系が多い地域などへも展開していきました。人種のデモグラフィックが極端に異なるのがアメリカであり、当然住んでる人が異なればその土地に求められる物や店、サービスも異なりますが、それに対応するノウハウを身に付けて行ったのです。

今後、ダイソーはテキサスを中心とするアメリカ中南部にも店舗数を増やしていく計画です。中南部は西海岸と比べて保守的であり、多様性や多文化を否定するような排他的な側面が強い土地柄だとも言われていますが、ターゲット層に合った商業戦略のノウハウとSPAの強みを活かして更なる事業展開をしていけそうです。

北澤Nozi

ローカライゼーションは国ごとだけでなく、地域ごと、市ごとにまで細分化し、住民のデモグラフィーの違いによる嗜好を戦略に取り入れないといけないということがわかりました。次に、ローカライゼーションに重点を置き、自社の商品の名称や味までも変えている例を見てみましょう。

【味の素】徹底した地元密着戦略、分類を越えた究極の多角化

味の素の海外売上比率は約60%、日本発のグローバル食品メーカーとして110年以上もの歴史がある海外事業の先駆けである味の素のビジネスモデルから、海外進出成功の鍵を学びましょう。

「うま味」という言葉は1908年、味の素の創業者である池田菊苗によって作り出されました。池田博士は、昆布には四基本味である酸味(さんみ)、甘味(かんみ)、塩味(えんみ)、苦味(にがみ)の味があることを証明するために研究を重ねました。その後、世界で初めてアミノ酸の一種であるグルタミン酸ナトリウムの抽出に成功し、うまみ調味料として製品化したのが味の素です。Umamiが英語の単語としてオックスフォードの辞書に加えられたのは1979年。このことからも、味の素が人々の食事、言葉、文化へと浸透していった様子がうかがえます。

創業年は1909年、2022年3月時点では、世界24の国と地域に進出しており、世界の生産工場数は120工場あります。世界に展開したのは創業の翌年で、台湾と韓国への輸出が始まりです。戦争が始まる頃には既に中国、米国、東南アジアへの拡大が進んでいました。戦争中は一時海外取引を中断したものの、戦争後に輸出を再開。「味の素」 の輸出高は、1955年は3052トン、1969年には4.5倍の1万3796トンへと伸びました。その後も輸出規制、販売規制などの壁に対して柔軟かつ革新的な戦略を打ち出し、米国、ブラジルを拠点とする南米、ドイツを拠点とする欧米、さらにナイジェリアに生産拠点を置きアフリカへと進出しました。近年では、2016年にパキスタンに進出し、人口1億人を超える世界の全ての国への進出を遂げました。

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成功のポイント➀ 現地に親しまれるための徹底したローカライゼーション

出典:味の素「グローバル事業運営体制の再編」(2007年)

こちらの表から見とることができる通り、日本人の私たちが味の素の商品だとわかる調味料はひとつもありません。これは、進出する国や地域で異なるブランドの販売を行い、現地の人が親しみやすいネーミングをしているためです。パッケージングも現地の人の目線を大切にしています。価格帯も、キオスクのような小売店で売りやすいように、ワンコインで買えるように容量を調整するなど、現地目線を徹底させています。しかし、看板商品である「味の素」だけは世界で同じ名前「Ajinomoto」を通しています。これは覚えにくく自社は問題意識を持っているようです。

味の作りこみに関しても、現地での開発を徹底させています。社員が現地でインタビュー、家庭の調理方法や嗜好性の調査、食習慣の研究を重ね、現地の嗜好に合った製品の開発を行っています。

成功のポイント② 進出国で厳格化される輸入規制、現地生産拠点の設立

第二次世界大戦終結後、輸出先国での貿易規制が始まったことをきっかけに現地生産を開始しました。1960年前後にフィリピンとタイで現地企業との合併会社を設立し、現地生産に乗り出しています。この頃は米国や欧州の企業が東南アジアに製造拠点を作ることがブームになった時期とも言えます。味の素は各国で厳格化される輸入規制だけでなく、MSG (化学調味料)に対する販売規制にも柔軟に粘り強く対応しています。

成功のポイント③ 食品だけに留まらない、分類を越えた究極の多角化

北米のアジア食ブームを利用し、アジア料理に馴染みのない家庭をターゲットに発展したのが冷凍食品事業です。北米で販売されているアジアン食の冷凍米飯は、味の素の大ヒット商品のひとつでした。即席麺やパンケーキの素など、日本で取り扱いのない製品も海外で展開されています。

味の素の多角化は、食品だけに留まりません。味の素ファインテクノは、アミノ酸製造の技術を利用してヘルスケア製品、栄養剤、医療品、さらに接着剤などの製品も開発しています。

出展:味の素ファインテクノ株式会社「About us」(2023年2月5日)

その他の海外進出事例

海外進出には面白い事例がまだまだあります。今回ご紹介できなかった事例をまとめておりますので、ぜひご参照ください。

まとめ

この記事でご紹介した3つの企業に共通する点で一番大きな点は、考え方・体制共に柔軟であることかと思います。輸入規制、経営不振、法律規制、現地の風土の違いなど、様々な困難が目の前に立ちはだかった時、型にはまらない柔軟なアイデアでそれを乗り越えること、決断をすぐに行動に移せる体制であることが必須なようです。またSPA (製造小売業)もアイデアを実際に商品化するまでのリードタイムが短いという柔軟性があるため、「フレキシビリティ」が海外進出の鍵ではないでしょうか。

「海外進出で失敗しないように」と入念な調査をし、十分な準備をして進出をすることは勿論重要ですが、それと同じくらい重要なのは「問題に立ち向かう柔軟さと粘り強さ」。皆様の新天地でのご活躍の例をどこかの記事で見つけることを楽しみにしております。

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北澤Noziセカビズライター
通年20年の海外経験があり、南アフリカと日本を行き来する生活を送っています。市場調査員として南アフリカの企業と関わり、フィールドワークの中で見えてきた「今、南アフリカで起こっていること」を日本の方と共有する記事を書きます。興味のあることは人権、環境、ビジネス、社会問題、サブカルチャーなどのジャーナリズム。趣味は料理とキャンプです。